研究概要 |
本年度は、前年度までに明らかにしたSirpα陽性胸腺樹状細胞サブポピュレーションによる血中タンパク抗原に対する胸腺内免疫寛容の新規誘導メカニズムと抗腫瘍免疫寛容への関与に加え、このシステムを利用して、過剰免疫反応性疾患に対する新規免疫療法の確立とその可能性について検討を加えた。その結果、以下の点を明らかにした。 ①可溶性のタンパク抗原を末梢血中に投与することによって、胸腺内において、抗原特異的な制御性T細胞を効率的に分化誘導することに成功した。②分化した制御性T細胞は数日後に末梢血中に動員され、タンパク抗原が豊富に存在する末梢組織に各種ケモカイン(CCL2,CCL17,CCL22)を介して誘導されることを証明した。③特異タンパク抗原を用いてIV型アレルギー反応実験モデルを作製したところ、1の方法で分化誘導した制御性T細胞が高頻度に炎症局所に浸潤し、過剰免疫反応を効果的に抑制することを明らかにした。④1の方法で分化誘導した抗原特異的な制御性T細胞は、以前に報告されている抗原非特異的に増殖させた制御性T細胞よりも効果的な免疫抑制効果を持つことが分かった。 これらの結果については、現在、論文投稿中であり、自己免疫疾患などの過剰免疫反応を伴う病態に対して、新規免疫療法の確立につながる重要な知見として意義あるものであると考えられる。
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