研究課題
慢性炎症性腸疾患は、我が国で急激に増加している難治性疾患であり病因の究明および効果的治療法の開発が望まれている。腸管免疫系の恒常性維持機構においてT 細胞活性化の抑制機構は重要な役割を担っており、申請研究の開始時には腸管自然免疫細胞にT細胞の増殖を直接的に制御する細胞集団が存在するのかは不明であった。申請書の記載に沿って、23年度には腸管内においてT細胞増殖活性を制御する新規の自然免疫細胞サブセットCX3CR1highCD11b+CD11c+ 細胞(制御性ミエロイド細胞:Mreg細胞)の同定及び作用機序の解明を行い、Proc Natl Acad Sci USA. (2012) 掲載が決定している。腸管組織において、T細胞の活性化を直接的に制御する自然免疫細胞の同定は世界初であり意義深いものと考える。Mreg細胞の機能はIL-10/Stat3シグナル依存的であり、炎症性腸疾患を自然発症するLysM-cre;Stat3flox/flox マウスへの野生型Mreg細胞投与が腸炎の症状を改善することより、Mreg細胞の機能不全がIBD発症に関与すること明らかにした。これらの知見を基にIBD治療法開発への応用が期待されている。また、申請書の記載予定よりも早く、in vivoにおけるMreg細胞の動態・機能解析を目的として、Mreg細胞特異的蛍光マウスやMreg細胞特異的欠損マウスを作成のための予備実験を開始した。我々はこれまでにDNAマイクロアレイ解析およびQ-PCR法により、大腸粘膜固有層内細胞においてMreg細胞にのみに高発現する遺伝子Xを同定した。今後は、遺伝子Xのプロモーター下に蛍光遺伝子venusもしくはジフテリアトキシンA(DTA)遺伝子を挿入したノックインマウスの作成を行う予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
腸管内においてT細胞増殖活性を制御する新規の自然免疫細胞サブセットCX3CR1highCD11b+CD11c+ 細胞(制御性ミエロイド細胞:Mreg細胞)の同定及び作用機序の解明を行いProc Natl Acad Sci USA. (2012) 掲載が決定しており、当初計画した予定よりも早くMreg細胞特異的蛍光マウスやMreg細胞特異的欠損マウス作成を行うことができているため。
(1)Mreg細胞特異的欠損マウスの作成; CD11c-DTRマウスと同様の方法でX遺伝子座にflox/neo-polyA/flox配列を挿入し、その直下にジフテリアトキシンA(DTA)遺伝子を挿入したノックインマウスの作成を行う。Mreg細胞はミエロイド系細胞であるため、作成したX gene-DTAマウスをLysM-creマウスと交配させることによりMreg細胞を特異的に欠損させたマウスを作成する。(2)Mreg細胞特異的蛍光マウスの作成; Mreg細胞特異的欠損マウスと同様の構築でDTA遺伝子をVenus遺伝子に置換しMreg細胞が特異的に発光するマウスを作成する(3)Mreg細胞分化・活性化制御因子の同定;蛍光マウスの骨髄細胞を回収しCX3CR1high-Venus陽性細胞の分化・活性化制御に関与する因子を検討する。これにより、ヒトにおいてもIBDの症状改善が期待されるMreg細胞の自家移植方法確立に繋がる基礎基盤提供が期待される。
物品費:850,000円旅費:300,000円その他:150,000円計:1,300,000円
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Proc Natl Acad Sci USA.
巻: in press ページ: in press
PLoS Pathogs
PLoS One
巻: 6 (11) ページ: e27644
J.Exp.Med.
巻: 208 (7) ページ: 1533-46