研究課題/領域番号 |
23790537
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
曲 正樹 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50359882)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 胚中心 / 親和性成熟 / 濾胞樹状細胞 / IL-21 |
研究概要 |
本研究課題では、申請者らが独自に樹立した濾胞樹状細胞(FDC)株を利用する新規in vitro胚中心反応解析系を利用し、抗体の親和性成熟機構、特に多様化したB細胞の抗原に対する親和性に基づく選択機構の解明を目的とした。FDC株を利用したin vitro共培養系により、FDCより産生されるプロスタグランジンE2(PGE2)が、IL-21と共に作用する事で、B細胞にアポトーシスを誘導する事を発見した。これは、胚中心内で低親和性のため効率よく補助刺激を受け取る事ができないB細胞の積極的な排除機構(negative selection)の存在を示唆する。そこで、IL-21/PGE2によるアポトーシス誘導メカニズムの解明と実際に抗体の親和性成熟への関与について検討した。その結果、免疫したマウスのリンパ節細胞をIL-21/PGE2で刺激した結果、アポトーシス促進因子Bimと転写因子Foxo1 mRNAの発現増加が見られた。更に、IL-21/PGE2誘導性のB細胞アポトーシスはBimノックアウトマウスでは見られなかった事から、IL-21/PGE2誘導性のアポトーシスには、Foxo1-Bim経路が関与することが示唆された。次に、生体内でのIL-21/PGE2誘導性のB細胞死を調べるため、IL-21受容体欠損マウスおよびPGE2合成阻害剤であるインドメタシンとPGE2受容体のアンタゴニストを用いた。その結果、免疫したIL-21受容体欠損マウスにおいて、胚中心B細胞中のアポトーシス細胞の割合の減少が認められた。また、インドメタシンとPGE2受容体アンタゴニストを投与したマウスにおいても同様の傾向が認められた。これらの結果より、胚中心内においてIL-21とPGE2の関与するB細胞選択機構の存在を示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画に挙げた通り、IL-21/PGE2によるアポトーシス誘導メカニズムの解析および生体内の胚中心内におけるIL-21/PGE2依存的なB細胞アポトーシスが実証できたことより、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、薬剤投与によりFDCの産生するPGE2の役割の解析を行ってきた。次年度は、申請者らの樹立したFDC株の遺伝子ノックダウン系を構築し、FDCの産生するPGE2の役割を直接的に検討する。実際には、PGE2合成酵素をノックダウンしたFDC株を樹立する。さらに、FDC欠損マウスへのFDC株の再構築系を確立し、生体内でFDCの胚中心反応への関与を直接的に検討可能な系を構築する。最終的に、PGE2合成阻害したFDC株をFDC欠損マウスに導入し、B細胞の選択機構への関与を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、主にFDC株の細胞培養用試薬および遺伝子改変系構築のための遺伝子組み換え試薬に研究費を充てる。更に、FDC欠損マウスの血中抗体価の測定および免疫したマウスのリンパ節等の免疫組織学的解析用の試薬に研究費を使用する。
|