研究課題/領域番号 |
23790551
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
竹内 新 独立行政法人理化学研究所, 免疫シグナル研究グループ, 研究員 (00360579)
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キーワード | 免疫学 / 細胞接着因子 / 粘膜免疫 |
研究概要 |
前年度までに、CRTAM陽性CD4+T細胞の生体内における働き、特に腸炎の発症過程における重要性を示してきた。 本年度はCRTAM分子と、その陽性CD4+T細胞自体にどの様な機能が備わっているのかを中心に解析した。野生型のナイーブCD4+T細胞を刺激し、CRTAM陽性及び陰性の細胞に分けた後、Th1, 2, 17等、それぞれの条件下で分化誘導を行った。CRTAM陽性の細胞でも、それぞれの細胞に正常に分化することが示されたが、分化誘導をかけない培養条件下においてもCRTAM陽性細胞はIFNγ産生細胞となることが判明した。また、CRTAM陽性と陰性のCD4+T細胞間でマイクロアレイによる比較を行ったところ、陽性細胞ではIFNγ、CD8α、granzyme B、eomes等CD8+T細胞に特徴的な分子の発現量が顕著に増加していることが判明した。これらの結果から、CRTAM陽性のCD4+T細胞は、CD4+T細胞の基本的な機能を保持しつつも、CD8+T細胞様の特徴も兼ね備えた非常にユニークな細胞である可能性が示唆された。 また、前年度に作製したトランスジェニックマウスの解析を開始した。このマウス由来のT細胞では、全てのCD4+T細胞でCRTAMを発現する。脾臓由来のCD4+T細胞を刺激すると、IFNγやIL-17の産生量に顕著な亢進が認められた。これはメモリーT細胞の大幅な増加に起因する物であった。大変興味深いことに、細胞内ドメインを欠失したCRTAMを発現するトランスジェニックマウスでは、メモリーT細胞の増加は認めるものの、IFNγ産生量の亢進は認められなかった。これらの結果から、CRTAMの細胞表面への発現は、メモリーT細胞への分化を促進するのと同時に、細胞内ドメインはIFNγの産生誘導に深く関与している可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特にCRTAM陽性CD4+T細胞の機能解析には大きな進展があり、この細胞が非常にユニークな特徴を兼ね備え、特別な働きをしている可能性を示すことが出来た。また、作製したトランスジェニックマウスの解析からCRTAM分子の細胞内及び細胞外ドメインに異なる役割が存在する可能性を示唆する結果も得られており、全容解明に向けて順調に進展している。一方で、予定していたNecl2/Rag二重欠損マウスを用いた大腸炎誘導の実験は、二重欠損マウスの繁殖が非常に困難であり、残念ながら個体を得るまでに至っておらず、別の方法を検討する必要性がある。また、ブロッキング抗体の作製も継続的に試みているが、現在までに単離には成功していない。CRTAMを認識する抗体は容易に単離できるものの、リガンドとの結合を阻害できるクローンは得ることが出来ず、目的の抗体を得る為にはエピトープを絞って新たなスクリーニング方法を試みる必要性があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はCRTAM陽性CD4+T細胞がどの様に誘導され、IFNγ産生能を有する細胞になるのかを詳細に検討する。特にこれまでの解析から、eomesを強制発現させたCD4+T細胞由来の細胞株では、刺激によってCRTAMの発現が誘導されてくることを見出しており、eomesを始めとするIFNγ産生に関与する転写因子とCRTAM陽性細胞の関係について調べる予定である。また、CRTAMの発現自体がどの様にメモリーT細胞への分化やIFNγの発現に寄与しているのか、リガンドとの関係も交えて検討する。さらにそれらが生体内、特に腸管おける免疫機構にどの様な影響を与えているのか、大腸炎誘導モデルの結果等も含めて総合的に考察し、学術誌に報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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