本研究では、リンパ球の活性化に伴って発現が誘導される細胞接着因子、CRTAMが、どの様な働きを担っているのか明らかにすることを目的としており、特に今回は腸管内に多く認められるCRTAM陽性CD4+T細胞に注目した。 この細胞は通常、2-5%程度の割合でCD4+T細胞に含まれる、非常に小さな細胞集団であるが、腸管の粘膜固有層では2割弱を占めている。このことから、CRTAM陽性CD4+T細胞が腸管内で特別な役割を果たしていると考えられたが、細胞の性質や働きは不明であった。 CRTAM陽性CD4+T細胞は、CCR9やα4β7インテグリンといった腸管へのホーミングに重要な受容体の発現が高く、これによって腸管へ集積していると考えられる。また、この細胞にはCD4+T細胞の基本的な機能が十分に保持されている事も確認された。その一方で、マイクロアレイによる解析では、CRTAM陽性CD4+T細胞がCD8+T細胞様の特徴も兼ね備えているとこが示された。特にこの傾向は、特定のサイトカインで細胞に分化誘導をかけずに培養した場合に顕著であり、培養後のCRTAM陽性CD4+T細胞にはCD8+T細胞と同様の細胞傷害能が存在することを確認した。 更に、トランスジェニックマウスの解析から、細胞傷害活性の誘導にはCRTAM自体の発現が必要であることも判明した。CRTAMの細胞内ドメインを介したシグナルが転写因子Eomesの発現を促し、細胞傷害能に必要な遺伝子を誘導する。CRTAM欠損マウス由来のCD4+T細胞では、十分な細胞傷害能を獲得することが出来ず、大腸炎の誘導モデルで明らかな炎症の減弱を認めた。 この様に、CRTAM陽性CD4+T細胞はCD4+T細胞、CD8+T細胞の双方の特徴を持ち合わせた大変ユニークな細胞であり、とりわけ腸管内で細胞傷害活性を持つ細胞として免疫応答に寄与していることが明らかとなった。
|