インフォームド・コンセント(IC)は医師と患者の人生が交錯する場であり、臨床医に課せられた大きな使命でもある。ICで生じる現象に接近・共有するために、ICをめぐる医師の成熟プロセスを明らかにするために、本研究課題では3つの研究計画を立てた([研究1:健常人を含む質問紙調査]、[研究2:医師と患者の物語を捉える研究]、 [研究3:医学教育に還元するための研究)。平成23年度は『医療に関する達成動機尺度』の患者群における適応可能性を検討し(研究1)、観察研究実施(研究2-3)体制を整えた。翌年度には、化学療法を導入するためのICを対象に量的・質的アプローチを合わせたミックス法によるIC観察研究を遂行し、がん患者25名を効果判定時期まで追跡した。また、識者の集まる場でIC観察研究方法論を検討した(自主シンポジウム、日本心理学会WS)。 <ICで生じる現象への接近と共有>15年以上の臨床経験を持つがん専門医によるICの場に臨床心理士が観察者として参与し、量的データ(患者の心理状態やIC主観的評価、医師のIC自己評価など)と質的データ(IC前後の患者の様子、対話逐語記録、観察者の体験など)を集めた。患者の臨床像、対話の展開、観察者の体験した緊迫感、対話に滲み出る医師の信念など、これらICの場で生じる現象を分析の対象にするための観察記録を探究し、その現象を追体験・共有する方法を検討した(日本心身医学会近畿地方会 優秀演題)。 <ICをめぐる医師の成熟プロセス>IC事例の中には専門医の指導の下修練医が行ったICが含まれた。IC観察記録や修練医の自己評価より修練医が掲げる課題の変遷を記録し、IC研修後にインタビュー調査を行い、観察記録の一部をフィードバックした。
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