研究課題/領域番号 |
23790574
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研究機関 | 愛媛県立医療技術大学 |
研究代表者 |
南 貴子 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (10598907)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 人工授精 / 出自を知る権利 / 生殖補助医療 / 政策研究 / 国際情報交流 / オーストラリア・ビクトリア州 |
研究概要 |
生殖補助医療によって子どもを持つ家族の増加にもかかわらず、日本においては生殖補助医療を規制する法律が制定されていない。厚生労働省、法務省、日本学術会議などで、政策形成に向けて議論が重ねられてきたが、日本では、生殖補助医療を家族、子どもの視点から分析した研究の蓄積は少ない。海外では、1980年代より生殖補助医療の法制度化が進んでおり、貴重な先行事例となっている。本研究では生殖補助医療のなかでも、提供精子による人工授精(DI)に着目し、諸外国の法制度における問題点、特に法制度化が家族の在り方にもたらす問題(影響)を分析した上で、生まれてくる子どもや家族、ドナーの視点から、どのような社会的政策が求められるのかを明らかにすることを目的として研究を行っている。 本研究では、諸外国のなかでも、世界に先駆けて生殖補助医療を包括的に規制する法律を制定して以降、法改正が繰り返し行われ、先駆的・革新的な試みがなされているオーストラリア・ビクトリア州の事例に着目した。ビクトリア州では、特に、生殖補助医療において問題とされている子どもの出自を知る権利に関して、独自の取り組みが行われている。 夫婦以外の第三者による提供配偶子を用いる生殖補助医療の問題は、医療の問題だけではなく、家族の在り方を揺るがす問題であるがゆえに、社会的に大きな議論となっている。なかでも、提供精子による人工授精における子どもの出自を知る権利に関する問題は、生殖補助医療を巡る様々な問題の原点であることから、今後の生殖補助医療政策の展開にとって避けることのできない課題となっている。そこで、23年度は、近年のビクトリア州における子どもの出自を知る権利を巡る政策についての調査・検討を行い、生殖補助医療を巡る問題点を整理することで、2年目の研究に向けての基礎付けとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は、オーストラリア・ビクトリア州で開催された14th World Congress on Human ReproductionやAustralian & New Zealand Infertility Counsellors Associationが、ビクトリア州における生殖補助医療の監督機関であるVictorian Assisted Reproductive Treatment Authorityとオーストラリアの当事者団体であるDonor Conception Support Groupとの共催で開催したシンポジウム等に出席し、生殖補助医療を巡る法政策、及び、DI当事者やその家族の問題に関する最新の情報を得て、知見を深めることができた。また、ビクトリア州の州立図書館等において、生殖補助医療に関する文献・資料の収集を行った。その分析結果の一部は、生殖補助医療政策を巡る世界的な動向も踏まえつつ、「生殖補助医療の法制度化における課題」としてまとめ、論文(総説)として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
オーストラリア・ビクトリア州においては、2010年1月1日から Assisted Reproductive Treatment Act 2008(2008年法)が施行され、生殖補助医療によって生まれる子どもの福祉の観点から、独自の改革が行われている。しかし、その2008年法においても様々な問題が表面化してきており、次の法改正に向けて、既に議論が始められている。そこで、本年度は、2008年法においてもなお残されている問題点を整理し分析することで、子どもの出自を知る権利をはじめ、生殖補助医療政策における根本的な問題の解決に向けて、我が国における政策提言を行い、まとめとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は、ビクトリア州において開催されたシンポジウムの日程と重なり、学会報告を行うことができなかった。24年度は、これまでの研究成果を踏まえ、学会報告を行う予定であるため、旅費等の経費が必要となる。また、引き続き、ビクトリア州をはじめとする海外の事例を研究するため、文献・資料収集、及びその調査・分析のための費用が必要となる。
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