研究課題/領域番号 |
23790577
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
竹島 太郎 自治医科大学, 医学部, 助教 (50554565)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | プライマリ・ケア / 診断 / 症候 / 診断サポートツール / 臨床予測ルール |
研究概要 |
1、新規健康問題の把握(研究計画1)(1)中小病院における受診理由と診断:2010年5月~2011年3月に、筑西市民病院総合診療科外来を受診した成人1560症例を対象とした。「主訴」は2308件、ICPCコーディングできた「症状・愁訴」は2232件(96.7%)、164種であった。上位29種類で約80%を占め、分野別で上位から呼吸器R 612(21.5%)、全身と不特定の問題A 545(23.6%)、消化器D 403(17.5%)と続いた。「診断名」は1779件で、ICPCコーディングできた「疾病と診断」は1731件(97.3%)、196種であった。上位50種類で約80%を占め、分野別で上位から呼吸器R 548(30.8%)、消化器D 379(21.3%)、循環器K 145 (8.2%)と続いた。(2)筑西市民の新規健康問題:2010年10月の1ヶ月間の筑西市民5754名に生じた「症状」を解析した。2114人(37.0%)に新規の症状が発生し、腰痛・背部痛、頭痛、上気道症状と続いた。2、診断サポートツールの作成(研究計画3)(1)菌血症の臨床予測ルールの作成とその検査特性の評価:2008年4月~2009年2月に静岡県立総合病院総合診療科にて菌血症が疑われ血液培養を施行した140症例を対象とし、病歴、バイタル所見、簡易検査所見を予測因子としてアウトカムを真の菌血症とした。統計解析結果をもとに、予測変数として年齢≧75歳以上、体温≧38.0℃、血小板<15万/μl、心内膜炎所見を選定し、スコアをそれぞれ1、2、3、4とした。このモデルの認識力はAUC 0.81(0.71-0.91)、適合度はGoodness of fit-testでp=0.78と高く、妥当性はBootstrap法でAUC 0.80と高かった。合計スコア≧6で診断、スコア≦2で菌血症の除外に役立つことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の計画通りの成果を得ることができ、次年度に向けての環境整備、研究実施準備を進めることができた。1、新規健康問題の種類と頻度の把握(研究計画1):(1)中小病院を受診した初診患者の「受診理由(主訴)」および「臨床診断」について詳細に明らかにすることができた。(2)一般住民における新規健康問題について明らかすることができた。2、新規健康問題に対する疾患の事前確率(有病割合)の把握とセッティングによる違いの検討(研究計画2):1で得たデータベースをもとに、中小病院における有病割合を解析できる。更にセッティングによる違いを明らかにするために、種々のセッティングでプライマリ・ケア診療に従事している臨床医が経験した初診患者の主訴と診断を抽出する準備を進めている。3、診断サポートツールの作成(研究計画3):(1)菌血症の臨床予測ルールを作成することができた。このテーマについてより詳細な分析が可能となるように、多施設で症例を集積する準備ができた。(2)悪性リンパ腫、弁膜症等の診断のためのサポートツールの作成準備も進めた。4、検査特性の検討(研究計画4):自治医科大学附属病院内におけるデータ抽出の準備を進めている。以上より「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前向きにデータの測定を予定していた計画を一部、後ろ向きに変更して実施する。1、新規健康問題に対する疾患の事前確率(有病割合)の把握とセッティングによる違いの検討(研究計画2):まず、中小病院の事前確率を研究計画1で得たデータベースを解析し明らかにする。更に、セッティング(診療所、中小病院、大病院)や来院時間、来院方法による違いを明らかにするために、種々のセッティングでプライマリ・ケア診療に従事している約30~50名の臨床医が1ヶ月間に経験する初診患者および救急患者の「主訴」と「診断名」を測定する予定である。目標症例数は2500である。2、診断サポートツール(研究計画3 )Common diseaseの診断:(1)菌血症の臨床予測ルール作成:目標症例数を2500とし、多施設(沖縄県立中部病院、天理よろづ相談所病院、名古屋第二赤十字病院、静岡県立総合病院)で実施する予定である。(2)弁膜症を予測する:自治医科大学附属病院臨床検査部で前向きに実施予定である。(3)良性発作性頭位性めまい症を予測する:自治医科大学附属病院総合診療科にて後ろ向きに実施予定である。Critical disesaseの除外:(1)急性膵炎を除外する、(2)肺塞栓症を除外する、および(4)頭蓋内疾患を除外する:市中病院救急外来症例で後ろ向きに実施予定である。(3)悪性リンパ腫を除外する:自治医科大学附属病院総合診療科にて後ろ向きに実施予定である。3、検査特性(研究計画4)及び海外で開発された診断サポートツールの妥当性の検討(研究計画5):自治医科大学附属病院データを用いて、後ろ向きに実施予定である。4、診断サポートツールの実用性の検討(研究計画6):栃木プライマリ・ケア研究会会員、自治医科大学卒業生、自治医科大学附属病院スタッフ、および研究計画2の協力臨床医に対して実施予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1、新規健康問題に対する疾患の事前確率(有病割合)の把握とセッティングによる違いの検討(研究計画2):研究調整のための旅費に約30万円。3、診断サポートツール(研究計画3)Common diseaseの診断:データ収集費用に約80万円。研究調整のための旅費に約20万円。聴診器購入に約10万円。4、検査特性の検討(研究計画4)及び海外で開発された診断サポートツールの妥当性の検討(研究計画5):追加費用必要なし。5、診断サポートツールの実効性の検討(研究計画6):通信費として約20万円。その他全体に関わる研究費として、解析用パソコンおよびソフトの購入に約40万円、データ入力費用に約15万円、海外の学会参加に約30万円、英文校正に約5万円の予定である。
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