2011年9月より2013年1月までに,東京慈恵会医科大学付属第三病院と東京医科大学病院の初期臨床研修医,全116名を候補者とし,そのうち同意の得られた71名に調査を行った.研究代表者が対象の研修医と模擬症例に関して,SNAPPSあるいはOne-Minite Preceptor(OMP)のいずれかの指導法で討議を行った.模擬症例は同一のものを使用し,調査はいずれかの指導法を1回とした.症例提示と討議の内容及び指導方法に対する研修医からの評価を研修医の学習アウトカムとした.討議内容は録音し,前者の評価に関して鑑別診断,疑問点・不明点,診療計画,学習課題のそれぞれの個数を測定した.後者の評価に関して自己評価表を研修医に配布し,「鑑別疾患を挙げやすかった」「疑問点・不明点を挙げやすかった」「診療計画を挙げやすかった」「学習課題を挙げやすかった」「症例提示を効率よくできた」「手順が示され症例提示がしやすかった」「症例提示が充実していた」を評価させた. SNAPPS群39名とOMP群32名を比較検討した.前者の評価は,疑問点・不明点の個数はSNAPPS群がOMP群と比して有意に多い結果だったが,他3項目は有意差はなかった.後者の指導方法に対する研修医からの評価では,「疑問点・不明点を挙げやすかった」「効率良く症例提示しやすかった」「手順が示され症例提示をしやすかった」「症例提示が充実していた」の項目で、S群とO群の間で評価に有意差が見られ、S群に肯定的な意見が多かった. SNAPPSとOMPを用いて症例提示の指導を行い比較した結果,症例提示と討議の内容や,指導方法に対する研修医からの評価に違いがみられた.また,同じ指導方法を用いても,それにより得られるアウトカムの個人差は大きかった.
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