超高齢社会において主体となる「慢性期医療」では、ケアは病院だけでは完結せず、より広い専門職との連携、すなわち「医療」関係者のみならず、「保健」や「福祉」関係者との連携がとても重要になる。 そのため、本研究では「専門職間連携」を効果的に学べる教育ツールの開発を目指し、その成果として「多職種間連携」を学ぶための『地域医療意志決定ドリル』や『地域医療資源体験ツアー』をパッケージ化した教育教材、及び同教材を広く普及するためのwebサイトを開発した。 まずドリルは3部構成になっている。第一部は座学形式の講義をおこない、地域医療と慢性期医療の現状、また地域医療のメインプレイヤーについて解説する。その後、第二部として、実際の地域医療の現場における症例集を複数で読み合わせをし、各症例における社会資源や多職種連携による意思決定メカニズムついてマトリックスを埋めながら検討する「地域医療意志決定ドリル」を開発した。さらに第三部として、地域における医療福祉資源を実際に体験してもらうために、足立区の西新井駅を中心に、2時間あまりをかけて、病院、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業書、老人保健施設、などを「はとバスツアー」のように、学生一人一人が教員の引率のもと、歩き回る地域医療資源体験ツアーを開発した。医療福祉資源が地域のどこにあり、住民の方々がそれをどのように利用しているのか、ということを学生にシミュレーションしてもらうことが目的である。 そして、これらのシミュレーション教育教材を、広く一般に公開し、多くの関係者に利用していただくことを目的として、webサイトである『医療現場における多職種連携教育サイト』( http://ipe-nms.com )を構築した。学生を中心とした関係者が職種を超えた連携を実体験することで、21世紀の医療に備える手助けになれば幸いである。
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