研究課題/領域番号 |
23790584
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研究機関 | 東京有明医療大学 |
研究代表者 |
高梨 知揚 東京有明医療大学, 保健医療学部, 助手 (10563413)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 鍼灸 / 医療情報 / 緩和ケア / 情報共有 |
研究概要 |
本研究の目的は、末期がん患者への臨床実践を行う鍼灸師および情報共有の対象となる他医療従事者を対象として、とりわけ緩和ケア病棟を有する医療機関における情報共有の実態を調査することで、鍼灸師と他医療従事者間の適切な情報共有モデルのあり方を検討することにある。研究期間内に明らかにする要点は(1)緩和ケア病棟を有する医療施設に対して鍼灸師による鍼灸施術実施に関するアンケート調査を行い、その現状(実施施設数、鍼灸施術実施の状況)を明らかにすること、(2)緩和ケア病棟で末期がん患者に対して鍼灸施術を実践する鍼灸師、および医師・看護師などの他医療従事者を対象にインタビュー調査を行い、鍼灸師との情報共有のあり方の実態について定性的に明らかにすること、の2点である。平成23年度は(1)の緩和ケア病棟を有する施設への鍼灸施術実施に関するアンケート調査を実施した。緩和ケア病棟入院料届出受理施設244施設を対象に実施し、98施設より回答が得られた。回答が得られた内、現在病棟内で鍼灸を実施している施設は6施設、過去に実施していた施設が6施設、これまでに実施はない施設が86施設であった。鍼灸を実施している6施設のうち、施術に関わる鍼灸師の立場は常勤が2施設、非常勤が3施設、患者依頼による外部施設からの派遣が1施設であった。鍼灸施術を鍼灸師に依頼するのは6施設中4施設が主に医師であった。施術対象となる症状は疼痛、だるさ、便秘、廃用による不快が挙げられていた。鍼灸導入の経緯として、「病棟発足時より必要性を考えて」、「もともと外来で行なっており患者が希望するため」、「痛みに対して他の手立てが無効であったため」等が挙げられていた。平成24年度は、鍼灸を実施している施設に対して鍼灸実施の現状及び情報共有に関する詳細な聞き取り調査を行い、情報共有の実態を定性的に明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間内に明らかにすることを目的としているのは、(1)緩和ケア病棟を有する医療施設に対して鍼灸施術実施に関してアンケート調査を行いその現状を明らかにすること(2)緩和ケア病棟で末期がん患者に対して鍼灸施術を実践する鍼灸師、および医師・看護師などの他医療従事者を対象にインタビュー調査を行い、鍼灸師との情報共有のあり方の実態について定性的研究により明らかにすること、の2点である。当初の予定では、平成23年度には(1)をすべて完了し、(2)のデータ収集まで行う予定であった。(1)については、当初平成23年度前半にアンケート調査を実施するはずが、作成のためのプレインタビューおよびリサーチに時間を要したため、実施が年度の後半にずれ込んだ。年度末までにアンケート調査は完了したが、分析が中途の段階にあるため、(1)の達成度は70%程度である。(2)については、(1)のアンケート調査が遅れたこと、また予想に反してインタビュー実施可能なインフォーマントの獲得に時間を要しており、平成23年度後半に実施できた調査は1件のみと、遅れをとっている状況である。(2)についてはほぼ達成できていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きアンケート調査結果の量的解析を推進し、平成24年度前半中に分析を終了する予定である。また、アンケートにおいて得られた自由記述の回答に対してTextAnalysisを用いて分析する予定である。この分析についても平成24年度前半中には終了する予定である。解析結果については、平成24年度後半に関連学会において論文投稿する予定である。また、インタビュー調査については現在進行中であるが、インタビュー調査に応じるインフォーマントが少ない場合には、医療機関の中で末期がん患者への施術を実践している鍼灸師を便宜的にサンプリングし、インフォーマントのエリアの拡大を図る予定である。インタビュー調査は平成24年度9月を目処に完了する予定である。10月から12月にかけて定性的な分析を行い、1月から3月の間に解析結果を論文投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度実施予定であったインタビュー調査が研究の遅れに伴いほぼ実施できず、大半の調査を平成24年度に実施することになったため、予定していた平成23年度分の研究費を平成24年度へ繰越すこととした。平成24年度の研究費については大半をインタビュー調査での旅費および謝金に充当する予定である。調査場所として複数の遠方施設が対象となっており、各施設につき複数名のインフォーマントへインタビューを実施するためその滞在費も考慮し相当の旅費が必要となる。また、インタビューは計20名に対して実施する予定でありその分の謝金が必要となる。インタビューに際し、とりわけグループインタビューを想定し、ビデオおよび三脚を購入する予定である。加えて、定性的データ処理において大量の印刷を行うため、時間短縮を目的にレーザープリンターを購入予定である。論文投稿費、報告書作成費で150000円を概算している。その他消耗品費としてインクカートリッジ代、分析用用紙代、文具費、郵送費を予定している。
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