研究課題/領域番号 |
23790584
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研究機関 | 東京有明医療大学 |
研究代表者 |
高梨 知揚 東京有明医療大学, 保健医療学部, 助手 (10563413)
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キーワード | 鍼灸 / 医療情報 / 緩和ケア / 情報共有 |
研究概要 |
本研究の目的は、末期がん患者への臨床実践を行う鍼灸師及び情報共有の対象となる他医療従事者を対象として、とりわけ緩和ケア病棟を有する医療機関における情報共有の実態を調査することで、鍼灸師と他医療従事者間の適切な情報共有モデルのあり方を検討することにある。研究期間内に明らかにする要点は①緩和ケア病棟を有する医療施設に対して鍼灸師による鍼灸施術実施に関するアンケート調査を行い、その現状(実施施設数、鍼灸施術実施の状況)を明らかにすること、②緩和ケア病棟で末期がん患者に対しての鍼灸施術を実践する鍼灸師、および医師・看護師などの他医療従事者を対象にインタビュー調査を行い、鍼灸師との情報共有のあり方の実態について定性的に明らかにすること、の2点である。平成23年度については①のアンケート調査を実施した。 平成24年度については、主に②のインタビュー調査を実施した。医療機関の中で末期がん患者への施術を実践している鍼灸師および関連の医師を便宜的にサンプリングし、5名の鍼灸師および2名の医師から聞き取り調査を行った。鍼灸師がカンファレンスやナースステーションでのインフォーマルコミュニケーションなど対面での情報共有の場に参加できている場合には、カルテだけでは窺い知れない患者の状況やその対応などを共有し、患者ケアにその情報を活かすことができていた。また対面で情報共有することそのものが鍼灸師および医師にとってのチームケア実践意識の醸成につながっていることも明らかとなった。今後鍼灸師がチームケアに参画する形で多職種と情報共有をする上では、受動的な情報獲得のみならず、対面的な多職種とのコミュニケーションをいかに積極的に実践していくかが重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年度には、緩和ケア病棟で末期がん患者に対して鍼灸施術を実践する鍼灸師、および医師・看護師などの他医療従事者を対象にインタビュー調査を行い、鍼灸師との情報共有のあり方の実態について定性的研究により明らかにすることをその目的としていた。 前年度の研究計画の遅れによりインフォーマントのサンプリング自体が遅くなった。また、当初アンケート結果の中から鍼灸を実践している施設に対してインタビュー調査を実施しようと考えていたが、その中ではインフォーマントを獲得することができなかった。その為研究代表者が便宜的にサンプリングを行わざるを得ない状況となり、サンプリング自体に大幅に時間を要すこととなった為、研究の進行がさらに遅れた。また、当初の想定のように多くの職種からは話を聞くことができていない為、現在鍼灸師を中心に多職種にインタビューを出来るようサンプリングと聞き取りを継続している状況にある。 上記理由により現在までの達成度についてはおおよそ30%程度である。当初20名のインタビュー調査を予定していたが、現状7名しか実施できておらず、また対象としたインフォーマントの職種に偏りがあり、当初の多職種からみた情報共有の実態を明らかにするという目的に比すると、現状のデータでは断片的すぎる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
現状インタビューのインフォーマントの獲得が困難な状況にある。緩和ケア病棟を有する施設(緩和ケア病棟入院料届出受理施設)に対象を限定するとインフォーマントが限られてしまうため、現在は緩和ケア病棟を有する施設に限らず、医療機関の中で鍼灸師が多職種と連携しながら緩和ケアを実践している施設に対象を拡大し、便宜的にサンプリングしている状況にある。今後は便宜的サンプリングおよび関連学会での呼びかけによりインフォーマントを増やし、より多くの職種からインタビューを行い、鍼灸師を含めた情報共有の実態に迫るつもありである。インタビュー調査は平成25年度前半に終え、平成25年度後半には定性的分析を行い、平成23~24年度にかけて実施したアンケート調査の結果も踏まえ、学会発表、論文投稿をする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に実施予定であったインタビュー調査が遅れ、またインタビュー調査のインフォーマントが少なく調査を十分に実施することができなかったため、引き続き平成25年度にインタビュー調査を継続することとした。そのため予定していた平成24年度分の研究費を平成25年度へ繰り越すこととした。 平成25年度分に関しては、複数名のインタビュー調査にかかる旅費と謝金に充当する予定である。また、研究結果の成果発表の旅費に充当する予定である。
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