研究概要 |
RA治療の費用効果分析の実施上、必要な取り組みを継続して行った。 (1)効用値、医療費とRAの疾患活動性との関連:横断調査の結果、疾患活動性が低度, 中等度では寛解状態に比して、EQ-5D効用値が有意に低いことが示された。多変量解析の結果、加齢と疾患活動性の上昇が効用値の低下に有意に関連することが示唆され、身体的機能(PF)、体の痛み(BP)、全体的健康感(GH)が効用値の規定因子として重要であることが示された。本検討から、RA患者の効用値は治療法間で差がないものの、加齢と疾患活動性の増悪により低減することが定量的に示された。なお、疾患活動性のレベルと医療費との間に関連は認められず、生物学的製剤使用の有無など治療法の種類と関連することが示された。 (2)SF-36と効用値の換算式の構築:QOL尺度としてよく用いられるSF-36のスコアから、効用値に変換するモデルの構築を行った。線形回帰モデルを構築し、適合度や予測精度の観点から比較を行い最適モデル案を提示した。 (3)疾患活動性と効用値の換算式の構築:RAの医療経済評価では病態推移を、疾患活動性の変化を指標としてモデル化することが一般的である。その際、疾患活動性から効用値に換算し長期的なQALYの推定を行う。そこで疾患活動性と効用値との換算モデル式の構築を試みた。DAS28とEQ-5D効用値との相関係数は-0.51と弱い相関を認めた。効用値と疾患活動性の換算式は以下の通り構築された:EQ-5D効用値=0.990-0.0867×DAS28 (4)分析モデルの構築:各種文献レビューを行い日本人データの利用可能性について検討を行った。現状では、費用・効用値データについてある程度の集積が認められる一方、長期的な病態推移および治療効果などシミュレーションに必要なデータの不足が認められ、今後の研究課題として残される。
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