研究課題/領域番号 |
23790587
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
白岩 健 立命館大学, 生命科学部, 助教 (20583090)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | QALY / 生産性費用 / 二重計上 |
研究概要 |
今年度は研究実施計画に記入した研究計画のうち、主にQALYと生産性費用の関係について調査を行った。通常「社会の視点」からの分析においては、生産性費用(仕事ができなかったことによる生産性の損失)を費用として加えることが一般的である。しかし、Washington Panelでは、生産性費用は効用値の低下として反映されアウトカムに含まれるため、改めて費用に含めることはdouble counting(費用と効果両方に生産性費用を計上してしまうこと)になり、支持しないとの見解をまとめた。しかし、この見解に対する批判も多く専門誌上で論争が戦わされたが、必ずしも結論が出ているわけではない。そこで、今年度のはインターネットパネルを用いたQALYと生産性費用の関係に関する実証研究を行った。重度から軽度までの8つの健康状態に対して、インターネットパネルから性・年齢での層別無作為抽出を行い、6400名の回答者が基準的賭け法(SG法)、時間得失法(TTO法)の2つの標準的手法で健康状態の主観的な価値付けを行った。生産性費用は(a) 特別の記載なし (b) 病気によって収入が失われる (c) 収入は補償されるという指示書きをランダムに提示し3パターン間でどのように得られる効用値が変化するか調査を行った。また、(a)ないし(b)に割り付けられた回答者には「どの程度所得が失われると考えたか」についてもたずねている。 調査自体は今年度中に終了しており、現在解析作業を行っている。詳細な結果は今後作成予定であるが、回答者の人口動態学的要因は日本全国の平均的な値を示しており、また性・年齢別の無作為抽出もうまくいっている。今年度になされる分析結果の一般化可能性を示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度目的とした生産性費用とQALYに関する調査は完了しており、統計解析作業を残すのみとなっている。回答者の人口動態学的特徴から層別無作為抽出が成功したことが示唆されている。その他の課題についても基礎的な文献を収集している。QALYと支払意思額との関係については現在プロトコルを検討中であり、今年度後半にも調査が可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度収集したQALYと生産性費用に関するデータの統計解析作業を行っていく。特に、生産性費用の提示方法による効用値の差やその差に与える因子の探索などを中心に検討する予定である。それらの結果として医療経済評価においてQALYと生産性費用を同時に考慮することの是非を考察する。また、次年度の調査計画としてQALYと支払意思額との関係を考えている。1QALYあたりの支払意思額は500~600万円程度とされているが、この値はおそらく健康状態の重症度等によって異なるはずである。支払意思額が健康状態の重症度によってどのように異なっているか検討できるような調査プロトコルを作成中であり、今年度の後半に調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は昨年度収集したQALYと生産性費用に関する統計解析を行うために、統計のソフトウェアやデータ解析用のPCなどを購入する予定である。また、データ入力等の事務作業を行うためにアルバイト謝金が必要になる。QALYと支払意思額の関係を調査するために、再度インターネット調査を行う予定であり、そのために業務委託費用として研究費を使用することを検討している。
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