研究課題/領域番号 |
23790588
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
新原 寿志 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 講師 (70319523)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 鍼灸 / 安全性 / 過誤 / 副作用 / 整形外科 / 医師 / アンケート調査 |
研究概要 |
全国の整形外科を有する病院等に勤務する医師を対象とし、鍼灸による過誤および副作用に関するアンケート調査を行った。ただし、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県は今回の調査対象から除外した。調査対象は、iタウンページに「整形外科」に登録された13,225件(重複除く)から上記3県(108件)を除いた13,117件とし、送付先は無作為に3,500件抽出した。アンケートは無記名式とした。調査の結果、アンケートの回収率は8.9%(310件)であった。過去5年間、鍼灸治療による過誤あるいは副作用を理由に受診あるいは症状を訴える患者を診察した経験について問うたところ、「ある」あるいは「なし」との回答は、それぞれ89名(28.7%)と214名(69.0%)であり、無回答は7名(2.3%)であった。症例数は5年間で合計428件、回答者全体での平均は1.4件、「ある」との回答者では平均4.8件であった(無回答除く、以下全て5年間で算出)。頻度の高い過誤・副作用は、鍼では皮下出血65件、灸では熱傷12.6%であった。ただし、灸は故意に侵害性の熱刺激を生体に与えるものであり、通常はI度からII度熱傷(浅達性)までである。今回、深達性II度熱傷あるいはIII度熱傷との回答は14件であった。また、重篤度の高い過誤としては、鍼による気胸(13件)と末梢神経障害(7件)があった。また、伏鍼(鍼の体内残留)については114件(ただし回答者1名が100件と回答)であったが、ほとんどは埋没鍼が流行した数十年前のものと推察されるが、その詳細は不明であった。いずれの過誤・副作用も、未熟な技術あるいは過剰刺激に起因にすると推察され、これらを念頭においた養成機関や卒後教育(定期研修)と共に、画像(2D・3D)や精巧な人体模型を利用した新たな安全性教育の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度は、東日本大震災による調査対象地域の制限および科研費の執行時期が不明確であったため、当初予想していた数量のアンケートを実施することができず、限定的な調査となった。また、過去の開業鍼灸師あるいは鍼灸師の養成機関へのアンケート調査の経験から、回収率を2-3割程度と予想していたが、これに反して1割未満という非常に低い回収率となってしまった。鍼灸に関する医師へのアンケート調査は、あまり例がないために敬遠された可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
アンケートの回収率が低かったことから、平成23年度にアンケート未送付の病院を対象に追加の調査を実施する。調査の経費は、平成23年度からの繰越金をこれに充当する。回収率の改善については、今のところ妙案は見つかっていない。アンケートの性質上、依頼方法や質問項目等を途中で変更することは好ましくないため、若干のレイアウト変更(誤記防止のため)に留めることとする。追加調査を行うことで全体の回答数を増やし、鍼灸の過誤や副作用に関する実態をより明らかにしたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の繰越金の約500,000円を追加のアンケート調査に、残りの約200,000円は、謝金と研究成果発表およびアンケートで使用しているパソコンの不具合の修理費に使用する予定である。
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