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2011 年度 実施状況報告書

メディアドクターの取り組みによる医療情報メディアの質向上に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 23790591
研究機関独立行政法人国立がん研究センター

研究代表者

渡邊 清高  独立行政法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 室長 (80422301)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードメディアドクター / 医療情報 / リテラシー / 研究成果の発信 / マスメディア
研究概要

医療報道記事を題材に、評価指標の設定と評価手順について妥当性、報道および医療関係者の間に認識について明らかにしながら、医療報道の質向上に資する評価手法を確立した。モデル記事を設定し評価者間の一致性と評価軸の妥当性の検証を行い、以下の結果を得られた。2011年6月の1ヵ月間に主要6紙の「健康上の問題を主題とする記事」を抽出、新規の研究(臨床試験含む)および解説を主題とする記事のうち、「薬」に関する記事を諸外国で使用されている指標を元に評価した。10名の評価者間の一致度をκ値にて評価、対医療提供者:0.190~0.417、対ジャーナリスト:0.211~0.495で、海外の先行研究と比較し低かった。評価指標としての妥当性を担保するためには、対象記事の選定基準や、指標の各項目の評価基準を、より明確にする必要があると考えられた。その背景として以下の3点があげられる。1)各評価軸ごとに「満足」「不満」「評価適用外」の基準を決めているものの、実際の記事に適用しにくく、評価者によって判断が異なる。2)解説記事の場合は、1本の記事が複数の研究成果を扱っており、記事全体を評価するのが難しい。3)今回は新聞記事を評価したが、紙面の都合によって、見出しや本文の長さに制約がある。踏まえて、情報源が明らかでない場合やエビデンスの質の評価が難しい記事(体験記や、医療制度の動向や暫定的な経過を扱う報道など)の場合の評価手法の開発、さらにはヘッドラインの適切性を含めた評価を行うこととし、評価基準については判断の目安を提示するなど、妥当性を高める検討を行うこととした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度予定していた医療報道の評価手法の確立について、複数のモデル記事を用いて評価手法の妥当性の検証を行った。報道および医療関係者の間に認識については当初想定した差がないことが明らかとなり、海外の事例に準拠する形で医療報道の質向上に資する評価手法を確立することができた。今後さらに評価記事を増やすことでさらに妥当性の確保と再現性の向上を図ることとしている。主に文字媒体の一般向けマスメディア(新聞、雑誌など)を対象としたが、テレビや専門誌などについても同様の手法が利用可能であった。一方で新聞社を対象とした著作物利用に関する意向調査では記事の引用について、海外と異なり本文へのリンクや評価結果を公開するホームページ等での掲載については困難である現状も明らかになり、報道内容の評価結果の蓄積の面での課題と対応策についても前倒して検討することができた。

今後の研究の推進方策

「医療情報発信とメディアリテラシー向上のために必要な要素の検討」初年度の検討に基づく評価対象記事の抽出と評価作業を行い、評価者と監修者(研究代表者と、数名の協力者)からなる評価作業チームを編成し、継続的に記事の評価が可能になるために必要な作業プロトコールの試作と運用、妥当性の検討を行う。具体的には以下の要素からなる。1)医療健康報道の現状把握と蓄積管理(アーカイブ)、及び評価情報を維持更新するための仕組み検討、2)評価チームによる作業に平行し、医療・健康上の論点について、当該分野の専門家を交えた意見交換、3)研究成果の発信やプレスリリース手法の望ましいあり方についての検討。さらに、情報の評価結果と手法の解説を通して、受け手である患者家族・国民が、報道された情報をどのように療養上の意思決定に活用していくのが望ましいかについての検討と、項目や手法について解説や理解を促すためのコンテンツの試作を行う。科学的、倫理的な妥当性を確保した、より正確な医療報道を行うには、医療関係者、研究者にもきちんとした報道記事が書けるだけの情報を発信するための取り組みが求められる。メディアリテラシーの向上を促すために必要な要素を評価作業により得られた知見を基に検討する。「わが国における医療・健康報道の現状把握と、課題の抽出」記事の属性(新規薬剤や医療技術、公衆衛生、基礎研究を扱う記事、など)と媒体の特性と実際の評価作業についての動向の分析を行い、評価項目の中でも報道の性質や扱う話題によって特に重要な要素がないかどうか、海外での動向を参照しつつ検討する。

次年度の研究費の使用計画

医療報道の評価手法の確立に向けた検討において、評価作業チームと立ち上げに伴う試作、プロトコール作成と妥当性・再現性の調査を実施する。また、記事のアーカイブ化を行い、医療報道についての経時的な動向の追跡と、継続的に記事の評価が可能になるために必要な作業プロトコールの試作と運用、妥当性の検討を行う。また、記事の属性や媒体特性による、実際の評価作業や評価結果の動向分析を行い、評価項目の中でも報道の性質や扱う話題によって特に重要な要素がないかどうか、海外での状況を調査する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 健康医療政策とコミュニケーションの研究と実践の現状2011

    • 著者名/発表者名
      高山智子、中山健夫、秋山美紀、杉森裕樹、渡邊清高
    • 雑誌名

      日本ヘルスコミュニケーション学会誌

  • [雑誌論文] 医療報道の読み解き方を考えるメディアドクター(mediadoctor.jp)2011

    • 著者名/発表者名
      渡邊清高
    • 雑誌名

      専門図書館

      巻: 250 ページ: 31-34

  • [学会発表] 医の倫理と法 医療情報の観点から2011

    • 著者名/発表者名
      渡邊清高
    • 学会等名
      医療法学シンポジウム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011年8月28日
  • [学会発表] 「患者必携」の普及スキーム検討と実践 がん情報提供の取り組み2011

    • 著者名/発表者名
      渡邊清高、浦久保安輝子、平野真紀、田尾絵里子、八巻知香子、高山智子、山本精一郎、若尾文彦
    • 学会等名
      第49回日本癌治療学会学術集会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011年10月29日
  • [図書] 厚生福祉「動き始めたメディアドクター 医療報道のあり方を考える取り組み」2011

    • 著者名/発表者名
      渡邊清高
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      時事通信社
  • [図書] 医療と報道 医療報道のあり方を探る新しい試み 医療者と報道者、協働して行う検証作業2011

    • 著者名/発表者名
      渡邊清高
    • 総ページ数
      3
    • 出版者
      朝日新聞社

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公開日: 2013-07-10  

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