研究課題/領域番号 |
23790591
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
渡邊 清高 独立行政法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 室長 (80422301)
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キーワード | メディアドクター / 医療情報 / リテラシー / 研究成果の発信 / マスメディア |
研究概要 |
医療報道記事を題材に、評価指標の設定と評価手順について妥当性、報道および医療関係者の間に認識について明らかにしながら、医療報道の質向上に資する評価手法を確立した。前年度実施した評価者間の一致性と評価軸の妥当性の検証に基づき、以下の結果を得られた。 1)評価方法および評価基準の改訂と妥当性評価 利用可能性、新規性、代替性、あおり・病気づくり、科学的根拠、効果の定量化、弊害、コスト、情報源、ヘッドラインの適切性、背景説明の評価軸を新たな評価手法の改訂版として作成し、満足/不満の基準とともに修正した。修正された評価軸に基づき、この研究班が連携しているメディアドクター研究班の定例会で177名を対象に評価作業を行った。のべ12本の記事を評価し、大多数の合意の基準とした2/3以上の一致率は71.4%であった。一方、一致したとした中には、記事の内容や性質を踏まえて評価基準の解釈のさらなる修正が必要なものも認められた。評価指標としての妥当性を担保するためには、対象記事の選定基準や、指標の各項目の評価基準を、より明確にする必要があると考えられた。その背景として以下の3点があげられる。1)各評価軸ごとに「満足」「不満」「評価適用外」の基準を決めているものの、実際の記事に適用しにくく、評価者によって判断が異なる。2)解説記事の場合は、1本の記事が複数の研究成果を扱っており、記事全体を評価するのが難しい。3)今回は新聞記事を評価したが、紙面の都合によって、見出しや本文の長さに制約がある。 踏まえて、今後は評価結果の公開に向けて、評価マニュアルなど標準的な評価手法の確立を目指し、評価基準については判断の目安を提示するなど、妥当性を高める検討を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度行った医療報道の評価手法の妥当性評価に基づき、複数のモデル記事を用いて評価手法の検証を行った。報道および医療関係者の間に認識については当初想定した差がないことが明らかとなり、海外の事例に準拠する形で評価手法をさらに精緻化することができた。評価手法の標準化を行うことでさらに妥当性の確保と再現性の向上を図ることとしている。 主に文字媒体の一般向けマスメディア(新聞、雑誌など)を対象としたが、テレビや専門誌などについても同様の手法が利用可能であった。わが国においては新聞記事のリンクや複製について、海外と異なり本文へのリンクや複製掲載は困難であることを踏まえ、報道内容の評価をそのまま公開することは難しく、記事の事実関係を紹介した上で、検討事項の紹介をホームページ上で行い、評価作業を経て得られた示唆について発信していくなど、現状の公開方法について対応策について検討した。また、琉球大学とともに地域のメディア関係者と共同にて沖縄で行った2回の検討結果をまとめ、地域のマスメディアにおける健康情報発信の現状と課題の分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
「医療情報発信とメディアリテラシー向上のために必要な要素の検討」 これまでの検討に基づく評価対象記事の抽出と評価作業を踏まえ、評価者と監修者(研究代表者と、数名の協力者)からなる評価作業チームを編成し、継続的に記事の評価が可能になるために必要な作業プロトコールの作成と運用、これまでの妥当性評価を踏まえたマニュアル化を行う。具体的には以下の要素からなる。1)医療健康報道の現状把握と蓄積管理(アーカイブ)、及び評価情報を維持更新するための仕組み検討、2)評価結果について、合意形成のための手法の検討、専門家の意見を評価結果に反映する仕組み検討、3)研究成果の発信やプレスリリース手法の望ましいあり方についての検討。さらに、情報の評価結果と手法の解説を通して、受け手である患者家族・国民が、報道された情報をどのように療養上の意思決定に活用していくのが望ましいかについての検討と、項目や手法について解説や理解を促すためのコンテンツの試作を行う。科学的、倫理的な妥当性を確保した、より正確な医療報道を行うには、医療関係者、研究者にもきちんとした報道記事が書けるだけの情報を発信するための取り組みが求められる。メディアリテラシーの向上を促すために必要な要素を評価作業により得られた知見を基に検討する。 「わが国における医療・健康報道の現状把握と、課題の抽出」 記事の属性(新規薬剤や医療技術、公衆衛生、基礎研究を扱う記事、など)と媒体の特性と実際の評価作業についての動向の分析を行い、評価項目の中でも報道の性質や扱う話題によって特に重要な要素がないかどうか、海外での動向を参照しつつ検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
医療報道の評価手法の確立に向けた検討において、評価マニュアルの作成、妥当性・再現性の調査を実施する。記事のアーカイブ化を行い、医療報道についての経時的な動向の追跡を行う。評価手法および評価作業を経て得られた示唆をメディアドクター研究会ホームページ上で発信するとともに、メディアや一般の利用者向けのアンケートを実施し、評価結果の公開に続くさらなるメディアリテラシー向上のあり方について、勉強会やメディア向け説明会の実施、地域メディアを含めた検討など、引き続き検討が必要な要素を抽出する。
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