研究課題/領域番号 |
23790601
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
和氣 秀徳 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60570520)
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キーワード | 抗体医薬 / 抗腫瘍薬 / HMGB1 |
研究概要 |
最初に、担癌マウス投与に用いる抗HMGB1モノクローナル抗体と対照抗体の大量精製を行い、Colon26細胞株担癌マウス(BALB/c)にオスモティックポンプを用いて抗体を持続投与(0.5microL/hour, 7日間)した。 次に、Colon26細胞株担癌マウス(BALB/c)モデルより摘出した腫瘍を固定し、パラフィンブロックを作製し、組織染色を行ったところ、対照抗体投与群と比べて抗HMGB1モノクローナル抗体投与群の腫瘍内新生血管が優位に減少しており、HMGB1が腫瘍血管新生に何らかの関わりがあることが示唆された。そこで、血管内皮細胞に対する、HMGB1と抗HMGB1モノクローナル抗体の効果を確認するために、血管内皮細胞株(EA.hy926細胞)を用いたin vitro チューブフォーメーションアッセイ(試験管内血管新生試験)を行った。しかしながら、HMGB1単独添加群はバッファーコントロール群と比べてチューブフォーメーションに優位な差は認められなかった。 以上の結果より、抗HMGB1抗体はHMGB1を中和することで腫瘍血管新生を抑制し、腫瘍増殖が抑えられると考えられた。また、血管新生にはHMGB1単独での作用ではなく、他の生体因子との相互作用が関連していると考えられる。 今後は腫瘍血管新生に焦点を当て、HMGB1がどのように血管新生を誘導するか明らかにすることで、抗HMGB1モノクローナル抗体の作用機序の解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、HMGB1が腫瘍血管新生を誘導しており、抗HMGB1抗体はHMGB1を中和することで、腫瘍血管新生を阻害し、腫瘍増殖抑制に働くという一連の作用機序を明らかにできた。しかしながら、未だcolon26細胞(大腸がん)とB16細胞(メラノーマ) による癌しか抗HMGB1抗体が効果を示す癌を明らかにできておらず、他の臓器由来の癌に関しても効果があるかを調べていく必要がある。また、HMGB1は血管新生を単独では誘導しない可能性が考えられるため、HMGB1と相互作用する他の生体因子の探索を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.抗HMGB1モノクローナル抗体の抗腫瘍効果が認められる細胞種の判別を行い、抗体効果の有無の原因は何であるか明らかにする。 2.HMGB1とどの生体因子が相互作用することで血管新生が起こっているかを探索し、より詳しいHMGB1の作用機序を明らかにする。 3.腫瘍組織からmRNA、タンパクを抽出し、抗HMGB1モノクローナル抗体投与群と対照抗体投与群で優位な差のある分子を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物(マウス)、抗体精製試薬、細胞培養試薬、組織染色試薬、ウエスタンブロッティンング試薬、Real-time PCR試薬、in vitro 血管新生試薬を購入する。
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