研究課題/領域番号 |
23790603
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石塚 洋一 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (70423655)
|
キーワード | 薬剤性肝傷害 / 小胞体ストレス / 医薬品副作用 / 医薬品有害事象 |
研究概要 |
本研究は、薬剤性肝傷害の中でも発生率が極めて高く、救命・救急医療の現場で問題視されているアセトアミノフェン(APAP)誘発肝傷害の病態機序解明および新規治療法開発を企図し、肝傷害形成における小胞体ストレス関連転写因子C/EBP homologous protein CHOP/GADD153(CHOP)の役割を検証するものである。昨年度までに、小胞体ストレスを検出できるERAI マウスおよびCHOP欠損マウスを用い小胞体ストレス-CHOP経路がAPAP肝傷害発症に重要な役割を果たしていることが示されていた。これらの知見に基づき本年度は以下の知見を得た。 APAP誘発肝障害におよぼす小胞体ストレス-CHOP経路制御化合物投与の影響を精査し、被検薬物の中でも4-PBAが顕著な肝障害抑制効果を有することを見出し、新規治療薬候補としての可能性が示唆された。 さらに、他の重症肝疾患モデルであるエンドトキシン誘発劇症肝炎モデルにおいても、CHOP欠損マウスでは肝傷害が軽減される傾向が見られた。一方、四塩化炭素誘発肝硬変・肝線維症モデルでは、野生型マウスとCHOP欠損マウスとでほぼ同程度の肝傷害・線維化が確認された。他の疾患における小胞体ストレス-CHOP経路の役割を調べる目的で、ブレオマイシン誘発肺線維症モデルにおいて検討を行ったところ、CHOP欠損マウスでは野生型に比し顕著に線維化が軽減されていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画では、A. ERAIマウスにおけるアセトアミノフェン肝傷害時の小胞体ストレス発現プロファイリングおよびCHOPノックアウトマウスを用いた肝傷害病態形成における小胞体ストレス-CHOP経路の役割の解析(平成23年度および平成24年度中期に実施)、B. 小胞体ストレス-CHOP経路制御物質のアセトアミノフェン肝傷害の新規治療薬候補としての可能性評価(平成24年度および平成25年度中期に実施)、およびC. 他の薬剤性肝傷害や劇症肝炎モデルにおける小胞体ストレス-CHOP経路の役割に関する探索的評価(平成25年度に実施)を実施予定であった。 研究実績の概要に記載のように、平成23年度に計画Aはほぼ終了し、平成24年度にBもほぼ終了し、既に計画を前倒ししてCを実施して多くの知見を得ている。 以上のことから、当初の計画以上に順調に進展していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度として、これまで得られた知見を学会・論文発表する予定である。現在、小胞体ストレス-CHOP経路制御化合物投与4-PBAのAPAP肝傷害抑制効果に関する研究成果を論文投稿準備を進めている。 また、昨年度までに得られた知見の発展的検討として、“小胞体ストレス-CHOP経路の制御”という本研究コンセプトの普遍性・発展性を検証する目的で、APAP肝傷害モデルと同様に、小胞体ストレス-CHOP経路制御化合物の肺線維症抑制効果を調べブレオマイシン誘発肺線維症の新規治療戦略としての小胞体ストレス-CHOP経路の制御の有用性を検証する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品費として、以下の様な消耗品を購入する。 平成25年度の研究の中核となる小胞体ストレス-CHOP経路制御物質の購入費用に充てる。研究の全体を通し必要な①HE染色およびTUNEL染色に用いる病理標本用試薬、②組織中グルタチオン測定に用いるグルタチオン測定キット、③組織中RNA発現解析に用いるリアルタイムPCR試薬等のRNA発現解析試薬、④組織中小胞体ストレスマーカのウェスタンブロッティング試薬、抗体等を小胞体ストレスマーカ解析試薬、⑤実験動物の苦痛軽減に用いる麻酔薬、採血用シリンジ・注射針等を動物実験用試薬などの消耗品購入に充てる。
|