研究課題/領域番号 |
23790605
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
三坂 眞元 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (10583635)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 薬物トランスポーター / 薬物相互作用 / 活性指標薬 / 薬物動態 / ナドロール |
研究概要 |
本研究は、アドレナリンβ受容体遮断薬であるナドロールを薬物トランスポーターのインビボ活性指標薬として確立することを目指すものであり、すなわちナドロールと種々の薬物トランスポーター阻害薬または誘導薬との相互作用を検討し、薬物トランスポーターの活性変動に起因する薬物相互作用のナドロールを用いた新たな評価法を構築することである。まず高速液体クロマトグラフィーを用いて血中および尿中におけるナドロール濃度定量法を構築した。ナドロールと排出トランスポーターであるP-糖タンパク質の阻害薬としてイトラコナゾールを併用したところ、ラットおよびヒトにおいてナドロールの最高血漿中濃度および血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)は有意に増加した。P-糖タンパク質の誘導薬として、ラットではデキサメタゾン、ヒトではリファンピシンを併用した結果、ナドロールの最高血漿中濃度およびAUCはコントロールと比べわずかに低下した。細胞内取り込みトランスポーターである有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)の阻害薬としてラットではナリンギン(Oatp1a5)、ヒトではグレープフルーツジュース(OATP1A2)を併用したところ、ナドロールの最高血漿中濃度およびAUCにおいてコントロールとの間に有意な差異は認められなかった。これらよりラットおよびヒトにおいてナドロールは主にP-糖タンパク質によって体内動態が制御され、Oatp1a5またはOATP1A2の影響は小さいことが示唆された。他の薬物トランスポーターの影響については今後さらなる検討が必要であるが、ナドロールはP-糖タンパク質に対して他の活性指標薬に比べ高い特異性を有するインビボ活性指標薬となり得ることを示唆した。今回得られた知見を基に、現在ナドロールの体内動態に関与する薬物トランスポーターのさらなる解明およびナドロールを用いた食品-薬物相互作用の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画のうち、1つめの課題であった「ラットにおけるナドロールと薬物トランスポーター阻害または誘導剤との相互作用試験」に関しては、液体クロマトグラフィーを用いたナドロールの測定法の構築に成功し、薬物トランスポーターの阻害薬および誘導薬を用いた相互作用試験を実施した。得られた成果を学会発表し、現在論文を執筆中である。2つめの課題であった「健常人におけるβ遮断薬と薬物トランスポーター阻害または誘導剤との相互作用試験」に関しては、10名の健常者を対象に臨床試験を実施した。ナドロールの体内動態および薬効を解析し、得られた結果を学会発表するとともに現在論文を執筆している。両課題とも計画策定時の作業仮説におおむね一致した結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ナドロールの体内動態に関与する薬物トランスポーターを明らかにするために、様々なヒト薬物トランスポーターを発現させた細胞系を用いてナドロールのin vitroにおける輸送実験を行い、これまで得られた知見に対して分子生物学的な手法により考察を加え科学的根拠を与える。ナドロールを用いた新たな薬物相互作用評価法の応用として、薬物トランスポーターに対する阻害効果が報告されている緑茶とナドロールの相互作用について、基礎および臨床試験により検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ナドロールおよび他の薬物の生体内濃度を測定するために超高速液体クロマトグラフィーを使用する予定であり、検出器としてUV検出器を購入する予定である。また緑茶とナドロールの相互作用を検討するための基礎実験および臨床試験物品費、および被験者への謝金として拠出する。またナドロールの体内動態に関与する薬物トランスポーターの同定を進めるために共同研究を開始する予定であり、共同研究機関との研究打ち合わせのための出張旅費として拠出する予定である。
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