研究課題
腎機能が廃絶した末期腎不全患者において、様々な薬剤服用により重篤な有害事象が生じることが報告されている。例えば、高脂血症治療薬であるHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン類)による横紋筋融解症の顕在化が有名である。この原因として、スタチン類の血中濃度上昇、末期腎不全患者の横紋筋におけるスタチン類の感受性増大が考えられる。昨年度までに、一部のスタチン類を分解する酵素であるCYP3A4機能が、末期腎不全患者において低下している可能性を指摘しており、そのメカニズムとして、末期腎不全患者血清中に蓄積する尿毒症物質による阻害、末期腎不全患者で低下する活性化ビタミンDの低下の可能性を指摘している。また、尿毒症物質の蓄積は、スタチン類の横紋筋毒性を増強することも報告している。本年度は、次に挙げる2点について明らかにした。まず、末期腎不全患者血清中には、CYP2D6の機能を低下させる物質は蓄積しておらず、CYP1A2の機能を低下させるキサンチン誘導体が蓄積していることである。また、昨年度までに示した尿毒症物質による横紋筋毒性の増強は、アポトーシスの増大により生じていることを示し、末期腎不全患者血清長期暴露細胞でも同様の結果が得られることを確認した。また、これらの毒性増強は、メバロン酸経路代謝産物であるゲラニルゲラニルピロリン酸で完全に回復し、ファルネシルピロリン酸により部分的に回復させることを明らかにした。一方で、他のメバロン酸経路代謝産物であるスクワレン、補酵素Q10及びドリコールの処置では回復しなかった。すなわち、尿毒症物質は、ゲラニルゲラニルピロリン酸の欠乏を助長することにより、スタチン類の横紋筋毒性を増強することが示された。以上の結果から、横紋筋細胞におけるゲラニルゲラニルピロリン酸の欠乏を防ぐことが、末期腎不全患者におけるスタチン類による横紋筋毒性を予防することに繋がることが示唆された。
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