研究概要 |
前年度、心腎連関の機序の一つに内因性NO合成酵素阻害物質ADMAの増加が重要な役割を果たしていることを示したため、最終年度はADMAによる血管障害発症メカニズムについて検討した。CKDモデルラットでは腎機能低下と血中ADMA濃度の上昇に伴い、大動脈におけるACE活性とsuperoxide産生が増大していた。さらに、ADMAを培養血管内皮細胞にADMAを負荷するとsuperoxide産生が増加し、これはACE阻害薬captoprilを併用することで抑制された。 前年度はCKDモデルラットを用いてEPO(erythropoietin)による血管保護効果にNO産生が重要な役割を担っている可能性を示したが、最終年度はさらに、腎・血管障害の重要な危険因子である糖尿病のモデルラットにおいても同様の結果を得た(Pharmacology, 2013; 91, 48-58)。NO以外のEPOの血管保護機序について解明すべく、NO合成酵素阻害剤負荷ラットにおける大動脈障害に対する効果と改善機序について検討した。NO合成酵素阻害下においてもEPOは大動脈の内皮機能低下や炎症を抑制し、その機序にはSODやHO-1等の抗酸化酵素発現増大やNADPH oxidase活性を介したsuperoxide産生の抑制を介していることを明らかにした。また、EPO投与により抑制性タンパク質であるSOCS-1発現が大動脈組織で増加していた。AngiotensinII負荷培養血管内皮細胞にEPOを投与するとsuperoxide産生が低下したが、これにSTAT5阻害剤を併用しSOCS-1産生を抑制すると、EPOによる抗酸化作用がキャンセルされた(Eur. J. Pharmacol., 2012; 691(1-3): 190-197)。
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