研究課題
本年度はシクロホスファミドおよびSP誘起膀胱炎モデルでの硫化水素合成酵素シスタチオニン-γ-リアーゼ(CSE)タンパク発現量増加におけるメカニズムの解明およびリポポリサッカライド(LPS)誘起膀胱炎モデルの作製と痛み・炎症の評価系の確立を中心に行った。1) シクロホスファミドおよびSP誘起膀胱炎モデルでのCSEタンパク発現量増加におけるメカニズムの解明:シクロホスファミド誘起膀胱炎モデルマウスにおける膀胱痛、膀胱炎症および膀胱組織中におけるCSEタンパク発現量増加がNK1阻害薬により抑制されたことから本モデルにおける膀胱痛および炎症の発現にSPの関与が示唆された。さらに、NF-kB阻害薬として知られるcurcuminを用いて、シクロホスファミド誘起膀胱炎モデルマウスにおける膀胱痛、膀胱炎症およびCSE発現量増加に対する効果を検討したところ、どちらも強く抑制されたことから本病態における痛みおよび炎症の発現メカニズムにNF-kBが関与する可能性が示唆された。2) LPS誘起膀胱炎モデルの作製と痛み・炎症の評価系の確立: LPSを膀胱内投与することにより炎症症状の指標である膀胱湿重量増加が認められた。さらに、膀胱周囲皮膚表面および後肢足底におけるvon Freyフィラメント刺激に対する反応の増加すなわち関連痛覚過敏が認められたことから、LPS誘起膀胱炎モデルの作製と痛み・炎症の評価系を確立できた。
2: おおむね順調に進展している
本年度、シクロホスファミド誘起膀胱炎における膀胱痛、膀胱炎症およびCSEのup-regulationにSP/NK1系およびNF-kBの関与が明らかになったことからCSE/H2S系を介する膀胱痛、膀胱炎症および膀胱炎症の発現メカニズムが明らかになった。さらに、LPS誘起膀胱炎の確立および痛みの評価系が確立できたことから、今後は本モデルにおけるCSE/H2S系の関与を明らかにしていく。以上のことから、本年度は当初の計画予定通りに研究を進行できたと思われる。
これまで得られた知見に加えさらに詳細な検討を行う。また、LPS誘起膀胱炎モデルの作製を試み、本モデルとSP誘起膀胱炎モデルとの違いを比較検討していきたい。1) LPS誘起膀胱炎モデルにおける関連痛覚過敏および炎症症状へのH2S-T型Ca2+チャネル系の検討:上記膀胱炎モデルにおいて、H2S合成酵素CSEの阻害薬であるDL-propargylglycine (PPG)が 膀胱湿重量の増加および関連痛覚過敏の発現を抑制するかを明らかにし、さらに、T型Ca2+チャネル阻害薬であるNNC 55-0396およびアンチセンス法によるCav3.2 T型Ca2+チャネルのノックダウンによりLPS誘起関連痛覚過敏が阻止されるかについて検討を行う。2) シクロホスファミドおよびSP誘起膀胱炎モデルでのCSEタンパク発現量増加におけるメカニズムの解明:前年度、NF-kB阻害薬により、シクロホスファミド誘起膀胱炎モデルマウスにおける膀胱痛、膀胱炎症およびCSE発現量増加が強く抑制されたことから、Western blot法を用いて、シクロホスファミド誘起膀胱炎モデルマウスの膀胱組織中においてikBのリン酸化認められるか否かについて検討を行う。
次年度の研究費使用計画薬学教育が6年制へ移行したことより、4年時のCBT、OSCE、5年時の実務実習等のカリキュラムが増え、研究室内の学生の人数が一年の間で大きく変動することとなった。特に、2012年9月から2013年1月の間は研究室内の学生数が少なく、実験を進行できなかったため、本年度の予算を次年度へ繰り越さなければならなかった。もっとも学生数が多く、研究を進めていける時期としては4から6月であると思われ、この時期に繰越金額を使用する予定である。次年度予算については7月以降に使用を開始し、12月までの間に支出を行なっていく計画である。
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Br. J. Pharmacol.
巻: 167 ページ: 917-928
10.1111/j.1476-5381.2012.02060.x.