研究概要 |
エキソソームは後期エンドソームが多胞体へと成熟する際に形成される直径40~100nm程度の膜内小胞のことである。エキソソームは多胞体が形質膜と融合することによって細胞外へ放出されると考えられている。エキソソームに内在する成分は由来する細胞の種類によって異なるため、それぞれの細胞株から分泌されるエキソソーム内にどのような成分が存在するか明らかではない。本研究ではまず大腸癌細胞株由来エキソソームの回収マーカーとして有用なテトラスパニンファミリー(CD63、CD9、CD81)の検出とエキソソーム内在性RNAの検出を行った。また大腸癌細胞株が分泌するエキソソームに内在する微量RNAを増幅し、マイクロアレイによるプロファイリングを検討した。 大腸癌細胞株由来エキソソームに存在するテトラスパニンファミリーの検出を行った結果、HCT-15ではCD63、CD9、CD81が検出され、SW480ではCD9およびCD81、WiDrではCD81のみが検出された。CD81はすべてのエキソソームから検出された。この結果をエキソソーム回収量の結果と比較すると、テトラスパニンの発現種類が少ない細胞ほどエキソソームの回収量が多いという結果が得られ、発現しているテトラスパニンの種類や量がエキソソームの分泌量に関与していることが示唆された。 エキソソームから抽出されたRNAを用いてRT-PCR法を行ったところ、エキソソーム内にはmRNA、microRNA、アンチセンスRNAが存在することが確認できた。さらにマイクロアレイ解析によって多くの種類のmRNA 、microRNA、アンチセンスRNAを同定した。特にエキソソーム内にアンチセンスRNAが存在することは今回我々がはじめて報告しており(Chiba et al. Oncol Rep, 2012.)、現在バイオマーカーとしての候補や有用性の検討をしている。
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