研究課題/領域番号 |
23790615
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金子 誠 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00377491)
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キーワード | ヘパリン起因性血小板減少症 / 検査法 / 血小板 |
研究概要 |
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を臨床診断するために施行される検査法の1つに,血小板第4因子・ヘパリン複合体抗体(HIT抗体)抗体活性を測定する機能検査法がある.本邦ではヘパリン惹起血小板凝集試験(HIPA)などが用いられているが,特異度は高いものの健常者血小板の選択により感度が異なり,検出感度が低いことも指摘されている.我々は,HIPAにおけるHIT抗体の健常者血小板に対する感受性差異の機序を検討した.健常者6名(25-60歳)から多血小板血漿(PRP)を作成し,検査部に検体提出されHIT抗体陽性と診断された臨床症例残検体を用いてHIPAを測定した.HIT抗体陽性血漿は,ELISA法(PF4-Enhanced,GTI社)で,同一患者から得られたOD 3.5以上のHIT抗体強陽性の検体をプールして使用した.HIPAの反応に大きな差異(強陽性・陰性)があった健常者2例に関して,FACSを用いてCD32(FcγRIIA),PAC-1,CD62,Annexin Vを用いて比較したところ,PAC-1結合のみに反応の差(陽性例のほうが結合が大きい)が認められた.健常者検体すべてにおいてPRP(クエン酸採血)またはCTAD採血管血漿でのPF4・βTG測定を行ったところ,CTAD採血管血漿では大きな差がないが,反応性の強い検体に関してはPRP上清での測定値がより高い結果となっており,血小板活性化が鋭敏であることが示唆された.PRP上清のPF4・βTG値とHIPAにおける透過光曲線AUCには正の相関が認められた. HIT抗体との反応性の高い健常者血小板は反応しない血小板に比較して,検査を行う際の遠心や検体調整などの人為的操作に対して血小板活性化しやすい検体であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度にHIT症例の分析を平成23年度に引き続き研究試薬で測定する予定であった.しかし,平成24年度9月からHIT抗体検査が保険収載され,当院でも平成24年12月から外部検査機関でのHIT検査が可能となった.このため,HITの検査方法の新規開発にあたり,この新しい保険収載されている検査と,従来の方法,血小板機能検査の相関を行う必要が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
ヘパリン惹起血小板凝集試験(HIPA)の感度を改善した方法の検証を行い,簡便に施行できるHIT検査法の確立のための検討を継続する.検査部に新しく検体提出されたHIT疑い症例検体の残検体を用い,ELISA法や従来法であるHIPAとの相関,臨床症状との関連を確認する. 欧米では,HIPAの代わりに洗浄血小板を用いた14Cセロトニン放出試験がゴールドスタンダードになっているが,アイソトープを用いるために研究室レベルの検査であり臨床検査に向かないこと,洗浄血小板などを作成するために遠心作業が多く操作が煩雑であるにもかかわらず,健常者血小板の選択により感度が左右される等の難点がある.私たちは,血小板からのセロトニン放出量を測定し,そのHIT疑い症例に対する臨床検査としての有用性を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費に該当する納入予定のHIT検査に関するELISA試薬,実験器具費用として450,000円,外部機関でのHIT検査依頼に対しての費用として100,000円,また論文等にかかる翻訳代,投稿料などの費用として50,000円を使用する予定である.
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