我々は血清IgGおよびIgG4が著明に高値を示す糖尿病を合併した自己免疫性膵炎の患者血清を患者同意の上、複数検体採取した。この患者の血清IgGは著明に高値であり、この血清を用いて、膵cDNAライブラリーのスクリーニングを行い、新規の自己抗体とその対応抗 原を同定した。予備実験で自己免疫性膵炎と劇症1型糖尿病に共通している新規の自己抗体と対応抗原を報告している。その中の一つであるアミラーゼ抗体に関してEnzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) 法の構築を行った。従来の方法では非特異的反応があり陰性検体でも偽陽性となることがあった。そのためアミラーゼ抗体の抗原決定基の特定を試みた。具体的にはアミラーゼ抗原を24基のアミノ酸ずつに断片化し、それぞれの断片を固相化しELISA法で比較した。その結果、抗原性が高い部位を特定することができた。現在、その抗原部位を固相化し、より感度、特異度の高いELISA法を構築している。また、その抗原部位をさらに分割し、抗原部位のより詳細な特定を進めている。今後、自己免疫性膵炎、劇症1型糖尿病、急性発症1型糖尿病、2型糖尿病などの患者血清を用い、陽性率を測定し、臨床的特徴と照らし合わせ検討を行う。また、新たに構築したELISA法にて特定された陽性患者では、発症前の検体から時系列で抗体価の測定も行う。そのことにより、アミラーゼ抗体が発症予測に役立つ可能性がある。もし発症前診断が可能となれば、妊娠後期に重篤な糖尿病性ケトアシドーシスを呈し、母体およびその胎児に生命の危険を及ぼすことが知られている劇症1型糖尿病の発症を予測でき、母体、胎児ともに救命できる可能性がある。
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