研究課題/領域番号 |
23790621
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 康子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00331869)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自己免疫性疾患 / 薬効予測 / IDO1 |
研究概要 |
自己免疫性疾患の中でも代表的な疾患である関節リウマチ(Rheumatoid arthritis、RA)は現在の日本において患者数約40~50万人と言われている。近年、RAを治療に導くことが可能な薬剤として注目を集めている生物学的製剤(抗TNF-α抗体、抗IL-6抗体など)は、高い炎症抑制作用があるが、非常に高価で、時に重篤な副作用が起きる症例がある。本研究では、慢性炎症に伴い発現が誘導されるトリプトファン代謝酵素indoleamine-2, 3-dioxygenase 1 (IDO1)の発現量やトリプトファン代謝産物に着目して、安価で簡便な方法で生物学的製剤の薬効予測を可能にすることを目的とした。 平成23年度には血液培養法による患者血液を使用した薬剤に対する反応性の検討とトリプトファン代謝産物の一斉解析法の確立を行った。生物学的製剤投与前の患者血液を培養することにより、薬剤添加有無によりトリプトファン代謝産物に変化がみられるかどうかを検討したところ、症例によりトリプトファン代謝産物の産生量に変化が認められた。このことは、トリプトファン代謝産物を測定することで薬剤の反応性を投与前に検出することが可能であることを示唆している。平成24年度には投与後の経過を観察し、血液培養によるトリプトファン代謝産物産生量と予後を比較することで薬効予測が可能であるかを検討していく予定である。また、本年度我々は、高速液体クロマトグラフィーを用いて患者血清中のより詳細なトリプトファン代謝産物の一斉解析法の確立を行った。微量の血清を用いて、各代謝産物を良好なピークとして定量可能な測定法を確立した。今回我々が確立した方法を用いてより詳細なトリプトファン代謝産物の測定を行うことで、生物学的製剤の薬効予測をさらに検討したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画に従い臨床検体を用いた生物学的製剤の薬効予測の基礎的検討を行った。生物学的製剤に対する反応性の指標として、症例ごとにトリプトファン代謝産物の産生量を比較検討したところ、症例により代謝産物の産生量に変化が見られている。次年度には、これらの基礎的検討をもとに症例毎の予後を経過観察することで、薬効予測が可能かどうかを検討する予定である。本年度に基礎的な検討が終了しているため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度においては、H23年度に行った基礎検討で確立された血液培養法やトリプトファン代謝産物一斉解析法を用いてより詳細に症例ごとの予後を比較検討することで、本方法の生物学的製剤の薬効予測の有効性を検討する。生物学的製剤投与前の患者血液を培養することで、それぞれの薬剤に対する反応性の差異をトリプトファン代謝産物を測定することで明らかにしたいと考えている。症例数の増加とこれまでに検討を行った症例の予後の追跡を行う。また、これまでに生物学的製剤を使用した患者血清や関節液を用いて、同一個人での薬剤投与前後の血清中のトリプトファン代謝産物の変化量にレスポンダーとノンレスポンダーの間で差が見られるかどうかを検討する。またその他、サイトカイン(TNF-α、INF-γ、IL-6など)の産生量に差がみられるかどうかも検討を行う予定である
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に代謝産物測定用試薬、培養関連試薬などの消耗品に充てる予定である。研究成果の発表のために一部旅費での使用を行う予定である。
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