研究概要 |
関節リウマチ(RA)は関節滑膜を炎症の主座とする自己免疫性の慢性炎症疾患で、詳細な病態解明及び根本的治療法は未だ確立されていない。近年、有効性の高い生物学的製剤により、早期からの寛解導入、関節破壊の進行阻止が可能になってきたが、薬価が非常に高い一方、1~3割で薬効が見られないのが現状である。本研究は、薬剤投与前の薬効予測を可能にする全血培養の手法を用いた検査システムの構築を目的とし、RAの病態と関連が報告されているindoleamine 2,3-dioxygenase 1(IDO1)に着目した解析を行った。 新規に生物学的製剤を開始するRA症例について全血培養にて、1)LPS刺激に対する反応性、2)使用予定薬剤に対する反応性、3)LPS刺激および薬剤同時投与による反応性をIDO1活性上昇に伴い産生されるKynurenine(KYN)値を用いて検討した。それぞれの反応におけるKYN産生率をスコア化し、治療評価指標であるCDAIやSDAIとの関連を検討した。 RA症例によりそれぞれの刺激に対してKYN産生の反応性に違いが認められ、LPS刺激によるKYN産生量はRA活動性と関連が見られた。また、3つの反応性を総合して作成したスコアと治療開始3か月後の治療評価指標との相関を検討したところ、CDAI(R=0.70)やSDAI(R=0.73)の有意な相関が認められた。 本検討により生物学的製剤投与前に全血培養を行い刺激に対する反応性、薬剤による刺激抑制能、及び炎症抑制能を総合的に評価することで、生物学的製剤の薬効予測が可能である事が示唆された。薬剤投与前に薬効を予測すること、また薬剤の選択が可能となれば非常に臨床的有用性のある手法と思われる。
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