研究課題/領域番号 |
23790622
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辰巳 直也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (60512960)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | microRNA / WT1遺伝子 / ノックアウトマウス / 骨髄増殖性疾患 |
研究概要 |
WT1遺伝子は白血病をはじめ種々の固形癌において高頻度に高発現し、がん化に深く関与する。しかし、WT1遺伝子の発現を調節する分子機序の詳細は未だ明らかにされていない。本研究では、WT1遺伝子を直接の標的としその発現を抑制するmicroRNAとしてmicroRNA-A(miR-A;仮称)を明らかにした。さらに生体内におけるmiR-Aの機能解析を目的とし、miR-Aノックアウトマウスを作成し解析した。その結果、miR-A(+/-)ヘテロ欠損マウスおよびmiR-A(-/-)ホモ欠損マウスともに、末梢血、脾臓、骨髄において成熟顆粒球の増加を特徴とする骨髄増殖性疾患(MPD)を発症することを明らかにした。さらにMPDを発症したmiR-A欠損マウスの造血幹細胞を多く含むLSK細胞分画(Lineage-Sca1+cKit+)において、標的遺伝子WT1の発現上昇が認められ、WT1-shRNA処理によるその発現抑制は、骨髄系細胞の増殖を阻害することを確認した。これらのことは、造血幹細胞分画においてmiR-Aは標的遺伝子WT1の発現を調節し、骨髄系細胞の産生を制御していること、さらにその制御機構の破綻が骨髄増殖性疾患の発症や維持に関与している可能性を示している。次年度は造血幹細胞において細胞内分子レベルでの詳細な解析を進めるとともに、これらマウス解析から得られた知見とヒト白血病との関連性を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、作成したmiR-A欠損マウス解析をとおし、miR-Aは特に造血幹細胞分画で重要な機能を果たしていること、そしてその欠損マウスは造血幹細胞異常を原因のひとつとする骨髄増殖性疾患を発症しうることを明らかにし、おおむね期待通りの知見が得られており順調に進展しいている。
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今後の研究の推進方策 |
miR-Aノックアウトマウス解析より、miR-A欠損は造血幹細胞レベルの異常に起因する骨髄増殖性疾患につながることが明らかになってきた。また骨髄増殖性疾患を発症したmiR-A欠損マウスの造血幹細胞分画において標的遺伝子WT1の発現上昇が確認された。今後は、造血幹細胞分画においてmiR-AがWT1を含めその他にもどのような遺伝子群を調節し、どのようなシグナルを制御しているのかを分子レベルで解析していく。また、マウス解析から得られたこれらの結果が、ヒト白血病においても関連があるのかを検討するため、白血病患者骨髄の幹前駆細胞分画を分離し、miR-Aの発現や標的遺伝子の発現を解析していくことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、miR-A欠損マウス解析により、miR-Aは特に造血幹細胞分画において標的遺伝子の発現を調節し重要な機能を果たしていることを明らかにした。次年度は、造血幹細胞分画においてmiR-Aが下流標的遺伝子WT1を含めどのような遺伝子群およびシグナルを調節しているのかを分子レベルで解析することを目的に、DNAマイクロアレイ解析費用に研究費を使用することを計画している。次に、アレイ解析から抽出できた遺伝子やヒト白血病患者骨髄におけるこれらの遺伝子やmiR-Aの発現を解析するためのPCR試薬キット類、その他マウス飼育費等に研究費を使用することを計画している。
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