光ファイバ表面プラズモン共鳴センサ(光ファイバSPRセンサ)は診断領域での実用化が期待されているが歯科領域での実用化は未だ行われていない.本研究の目的は表面プラズモン共鳴光ファイバSPRセンサを用いた歯周病診断システムの開発である. 23年度では,センサ表面におけるソフト界面の最適化を行った.その結果,Forsythia detaching factor(FDF)抗原を検出することを目的とした光ファイバ型表面プラズモンセンサチップへの抗FDF抗体の固定法について,センサ表面への抗FDF抗体の固定化にproteinGを介在させると抗体濃度5 %(v/v %)とした固定化条件において,抗原濃度に相関する傾向が認められた. 最終年度では,23年度の結果を踏まえ,FDF標準溶液を1 - 200 μg/mlの濃度に調整し, FDF抗原の定量化に必要な検量線の作成を行った.光ファイバSPRセンシングシステムを構成後, proteinGを介在させてセンシング部の自己組織化膜の構築を行い検量線の作成を行った.その結果,標準試料としてFDF溶液を1 μg /ml - 200 μg/mlに調整して抗原抗体反応の検出を行った場合にFDF濃度依存的な波長シフトの変化が検出でき、検量線 ( y = 0.0098 x + 0.431,R² = 0.9927 )が得られた.以上よりproteinGを介在して構築した自己組織化膜を有する光ファイバSPRセンサにより,FDF抗原の定量が可能であることが示唆された.現在までに,慢性歯周炎患者10名と健常者10名の唾液サンプルを本学倫理委員会の承認を得て既に採取済である.今後は唾液中のFDF抗原濃度の測定を行っていく予定である. 本研究により得られた知見は,表面プラズモン共鳴を用いた診断システムの構築にきわめて重要であると思われる.
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