研究課題/領域番号 |
23790627
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
中山 亜紀 文京学院大学, 保健医療技術学部, 助手 (00599425)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 尿中タンパク質 / Tamm-Horsfall protein / 尿中エキソソーム |
研究概要 |
1.尿中Tamm-Horsfall protein定量法の確立 尿細管上皮細胞で産生されるTamm-Horsfall protein (THP)のELISA法を確立したこの方法のルチン化すべく、使用するモノクローナル抗体とポリクローナル抗体、及びTHP標準品の追加精製を行った。これまでに健常人若年者群として本学学生ボランティア(平均年齢21 ± 2歳)、および健常人中高年者群としてその保護者(平均年齢54 ± 6歳)より提供を受けた尿検体のTHP濃度を定量したところ、前者は61.8 ± 3.15 mg/lであるのに対し、中高年者群では38.2 ± 3.81 mg/lと有意に低下していた。IgA腎症など各種腎疾患患者(平均年齢44 ± 16歳)においてはさらに低く、尿中THP濃度は10.4 ± 2.20 mg/lであった。以上の結果から、尿中THP濃度が年齢層によって異なることが推測され、疾患群との比較には年齢合致した比較群が必要であることが示唆された。2. 尿中エキソソームタンパク質の解析 健常人尿から二段階超遠心法によって分画されるエキソソーム小胞の構成タンパク質を二次元電気泳動法および液体クロマトグラフィー・質量分析法によって同定した。これまでに42スポットから33種のタンパク質が同定された。主に細胞骨格タンパク質や細胞質代謝酵素などが占める中、エンドソームの主要な成分であるAnnexin A2や、多胞体構成タンパク質であるCarged multivesicular body protein 1bが同定されたことで、エキソソーム生成過程を支持する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学内における研究費使用の施行が10月下旬と遅れたことで、研究計画を遅らせざるを得ない状況であった。申請時にいち早く着手したいと考えていた尿中アルブミンペプチドの同定については特に実施が遅れているが、Tamm-Horsfall protein のELISA法の確立と尿中エキソソームタンパク質の同定は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.THP:基準範囲の設定(年齢層別)、および分子多様性の解析 平成23年度の結果を受け、解析を行っていない年齢層についても同様にTHP濃度を求め、加齢に伴う生理的変化などを認めるのか否か明らかにしたい。THP構造の約30%を占める糖鎖が加齢に伴い、また疾患に応じて変化するかについても検討をしたいと考えている。2.エキソソームタンパク質の追加同定、およびエキソソームの免疫学的検出方法の検討 未同定のタンパク質について継続して同定する。これまでの解析では細胞膜タンパク質の同定率が低かったため、各種界面活性を用いて可溶化の条件も検討したい。最終的には腎疾患患者における尿中エキソソーム成分との比較を行い、疾患に伴って変動するタンパク質を見出したい。3.尿中アルブミンペプチドの検出 健常人尿中に多量に排泄されていると報告されている質量約10 kD以下のアルブミンペプチドの探索と同定に着手する。アルブミンペプチドのプロファイルを明らかにし、尿細管上皮細胞における生理的な代謝状態を把握したい。尿細管障害などに起因したプロファイルの変化が臨床的に意義を有するのか検討したい。なお、申請時当初実施を検討していたマイクロシリンジを用いたビデオマススペクトロメトリー法による尿細管上皮培養細胞中のアルブミンペプチドの解析については、研究開始の遅れに伴い実施せず、実際の健常人尿検体の解析からスタートさせたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度直接経費計1,300,000円の内訳:物品費750,000円、旅費500,000円、その他(英文校正費などとして)50,000円なお研究開始の遅れに伴い発生した平成23年度からの繰り越し金額である843,869円については物品費とする予定である。
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