研究概要 |
尿細管上皮細胞で代謝を受ける、ないしは分泌される成分に注目し、尿細管上皮細胞の機能評価を目的とした相互的な評価を行った。 1)糸球体から漏出したアルブミン分子は尿細管上皮細胞にて吸収され、一部が1~10 kD程度のペプチドとして尿に排泄されていることがゲル濾過クロマトグラフィ法や質量分析法を用いた手法によって明らかにされた。本研究では抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体をProtein G Sepharose処理タンパク質濃縮用磁気ビーズに吸着させ、健常人プール尿の低分子画分を免疫沈降して得られたアルブミンペプチドを液体クロマトグラフィ質量分析法によって解析した。その結果、再現性良く検出される質量約1,600 Daから3,300 Daの6種のペプチドを見出した。 2)尿細管上皮細胞に発現しており、健常人尿中のタンパク質として最も多量に存在するTamm-Horsfall protein (THP)の量的な変化が尿細管機能の指標と成り得るかを確認し、定量法を確立することを目的として研究を行った。尿中総タンパク濃度測定に用いられているピロガロールレッド等の色素との特異性が低いTHPを定量するには免疫学的測定法が有用であるため、自家製抗体を用いたELISA測定法を構築した。各種腎疾患患者において尿中THPは健常人群と比べて有意に低値を示した。また尿細管に組織的な異常を認めない、軽度の糸球体障害を示す段階の患者尿においても尿中THP濃度は健常人よりも有意に低値を示していた。この結果はTHPの定量が腎機能障害の予測に有用であることを示唆するものである。 3)尿中エキソソーム解析では、尿タンパク質や他の細胞膜性小胞のコンタミネーションを防ぐ方法を確立し、二次元電気泳動法及び質量分析法にて解析した結果、尿細管上皮細胞膜上に発現しているマーカー候補としてのタンパク質が約100種を同定された。
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