研究課題/領域番号 |
23790632
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
森田 いずみ 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (20299085)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 抗体工学 / 受動喫煙 / バイオテクノロジー / 分析科学 / 社会医学 |
研究概要 |
我々は先に, 低親和力ながら, モノクローナル抗コチニン抗体を産生するハイブリドーマを樹立した. さらに, その総RNAからVHおよびVL遺伝子をクローニングし, これらを結合したscFv 遺伝子を大腸菌に発現させて"野生型" scFv を調製している. 本年度は, このscFv 遺伝子を鋳型として, error-prone PCR によりVH 及びVL の全域を増幅し, 変異VH 及びVLの調製を行った. このとき, error-prone PCR 条件に工夫を加え, 従来法よりも偏りの少ないランダムな変異の導入について検討を行った. これら変異VH 及びVLをoverlap extension PCR により連結して, 変異scFv 遺伝子ライブラリーを作製した. このライブラリーをファージミドベクターに組み込んだのち, 大腸菌にトランスフォーメーションし, ヘルパーファージを感染させて, ファージ提示を行った. ScFv 提示ファージのライブラリーから, コチニン出発物質であるマウス抗体 (Ka=4×E6 1/M) よりも高い親和力を示すscFvを提示するファージクローン(CT-#17,Ka=6×E7 1/M)) について固定化コチニンに対するパンニングにより選択をした. 得られた"improved binder" の scFv 遺伝子を鋳型として, さらに変異の導入と選択を行い, ELISAから判断して,より親和力が高い2種のscFvクローン(CT-#54,CT-#106)を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画として挙げていた、抗コチニン野生型scFv 遺伝子を鋳型として, error-prone PCR によりVH 及びVL の全域を増幅し, 変異VH 及びVLの調製を行った. このとき, error-prone PCR 条件に工夫 (dNTPs のバランスの調整など) を加え, 従来法よりも偏りの少ないランダムな変異の導入について検討を行い、変異VH 及びVLをoverlap extension PCR により連結して, 変異scFv 遺伝子ライブラリーを作製した. 変異scFv 遺伝子ライブラリーをファージミドベクターに組み込んだのち, 大腸菌にトランスフォーメーションし, ヘルパーファージを感染させて, ファージ提示を行った. このファージ提示ライブラリーから, コチニンに対して,出発物質であるマウス抗体よりも高い親和力を示すscFvを提示するファージクローン("improved binder") を選択した.さらに,得られたimproved binder の scFv 遺伝子を鋳型として,再び変異の導入と選択を行い, より親和力が高い2種のscFvクローンを得た. 以上のように,1年目はほぼ期待どおりの成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
ScFvを用いるELISA には様々なフォーマットが可能であるが, その得失を系統的に検討した研究例は見当たらない. そこで, まず,昨年度得られたscFvのC末端にFLAGタグを付加して,可溶型タンパク質(scFv-FLAG)として調製する.また,scFvのC末端にアルカリフォスファターゼなどの酵素, または,IgGのFc領域を付加した結合体(それぞれ,scFv-Enz,scFv-Fc)を,遺伝子工学的に作製する.これらの修飾scFvを用いるアッセイシステム, すなわち, (1) scFv-FLAGを, 測定対象コチニンとマイクロプレートに固定化したコチニンとに競合的に反応させ, 固相上のFLAGタグを酵素標識抗FLAG 抗体で検出する方法, (2) scF-Enzを, 測定対象コチニンとマイクロプレートに固定化したコチニンとに競合的に反応させ, 固相上の酵素活性を直接検出する方法, (3) scFv-Fcを第2抗体固定化プレートに間接的に固定化して, 測定対象コチニンと酵素標識コチニンを競合的に反応させる方法を同一の抗コチニンscFv を用いて比較する. 最適なシステムについて,その感度と特異性を吟味する. その一方で,ヒト尿試料中のグルクロン酸抱合型コチニン代謝物の一斉加水分解(脱抱合) の条件を確立する. 起源を異にする数種のβ-グルクロニダーゼを比較し, 最適な条件を見出す. 上記の最適なELISA 系で, 脱抱合処理を施した受動喫煙者の尿試料を測定し, 添加回収試験, 段階希釈試験, 日内・日間変動試験などにより, 分析システムのバリデーションを行い, 高感度な簡易モニタリングシステムを確立する.
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次年度の研究費の使用計画 |
各種酵素, 化学合成オリゴDNA 類(PCR プライマーなど), 核酸精製キット類(60,000 円/100 サンプル), シークエンシングキット類(120,000 円/100 サンプル), ディスポーザブル器具類(試験管, ミクロ試験管, ピペット, シャーレ),scFv遺伝子塩基配列決定の依頼分析を含めた消耗品の購入などのために年間で1,000,000 円以上が必要と想定される. また, ライブラリーから単離した多くのscFv について親和定数をSPR により解析するが, 本分析の受託解析サービスにも基本料金として約1,000,000 円, さらに1 検体あたり100,000 円以上が必要である. これら実験遂行に必要な費用と合わせ、得られた成果を発表するための学会参加費用等に使用する予定である.
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