研究概要 |
我々は先に, 低親和力ながら, モノクローナル抗コチニン抗体を産生するハイブリドーマを樹立した. さらに, その"野生型" scFv を調製している.このscFv遺伝子を鋳型として, error-prone PCRにより変異VH及びVLの調製を行った. これら変異VH及びVLをoverlap extension PCRにより連結して, 変異scFv遺伝子ライブラリーを作製し,ファージ提示を行った. このライブラリーから, コチニン出発物質であるマウス抗体よりも高い親和力を示すscFv提示ファージクローンについて,固定化コチニンに対するパンニングにより選択をした. 得られた"improved binder"の scFv 遺伝子を鋳型として, さらに変異の導入と選択を行い, ELISAから判断して,より親和力が高い2種のscFvクローンを得た.これら改良型scFvを用いる競合型ELISAの条件を最適化して, ヒト尿中CTの測定を試みた. その感度を比較したところ,それぞれ0.2 ng/assayであり, マウス抗体を用いた従来のELISA (midpoint 5.3 ng/assay) と比べて大幅な高感度化に成功した. このELISAについて, 受動喫煙モニタリング法としての有用性を評価すべく, ヒト尿試料の添加による感度への影響を調べたところ, midpointはそれぞれ0.3, 0.4 ng/assayであり, 実用的な感度が十分に保たれていた. 健常ヒト尿200検体の測定を行ったところ, ポリクローナル抗体による既存の測定キットとよく符合する結果が得られた. 改良型scFvを用いることによりELISAを高感度化することに成功し, 受動喫煙下限レベル (5~10 ng/mL程度) の測定が可能になった. 本アッセイ系は, 受動喫煙のモニタリングに有用と期待される.
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