研究概要 |
エンドセリンは血管内皮細胞が産生する21アミノ酸残基からなる強力な血管収縮ペプチドとして発見された。エンドセリンは異なる3つの遺伝子によってコードされるペプチド異性体エンドセリン-1,2、3からなり、その薬理作用は若干異なる。エンドセリンの作用はエンドセリン受容体AとB(ETR-A、ETR-B)を介して細胞に伝えらえる。エンドセリンは種々の組織で産生され、いろいろな異なった作用を有していることが次々と明らかとなり、皮膚でも表皮細胞がエンドセリンを産生すること、エンドセリンを皮膚に局注するとそう痒が誘発されることが知られるようなってきた。申請者のグループも近年集中しエンドセリンの研究を行い、表皮細胞の産生するエンドセリンがメラノサイトにETRに結合し、最終的に転写因子であるMITFに働き色素増強に導くこと明らかにしている。表皮の変化を伴う皮膚疾患、たとえば、湿疹、アトピー性皮膚炎、痒疹、紅皮症、日光皮膚炎では、抗ヒスタミン剤の効果はほとんどなく、そう痒のコントロールに非常に苦慮する。本研究の目的は、表皮の変化を伴うそう痒性疾患でのそう痒へのエンドセリンの関与を明らかにし、そう痒に対する新しい治療戦略を確立することにある。表皮からのエンドセリンの産生について正常表皮細胞を培養して検討した。エンドセリンのmRNA発現をRT-PCR, 細胞内および培養液中のエンドセリンの蛋白量をウエスタンブロットにて解析したところ、表皮細胞がエンドセリンを産生、分泌することを再確認した。つぎに、エンドセリンを加えて表皮細胞の紫外線障害を検討したところ、エンドセリンが紫外線障害を軽減することが示された。また、その現象にヘムオキシゲナーゼが関連することを明らかにした。今回の研究の結果では、エンドセリンがそう痒に関連する結果が得られたが、結果が不十分であり、さらなる研究の継続の重症性が示唆された。
|