研究課題/領域番号 |
23790640
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山口 豪 金沢大学, 医学系, 助教 (60532182)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 虚血性心疾患 / 心臓痛 / ASIC3 / イソプロテレノール / 心臓知覚神経 / 行動解析 |
研究概要 |
【目的・方法】本年度は、虚血心疾患における心臓痛モデルの作成に取り組んだ。ラットにβ刺激薬であるイソプロテレノール(ISO)を投与すると心筋の壊死が起こり、心筋梗塞のモデルとして報告されている(Rona et al., 1959)。そこで、ラットにISOまたは溶媒である生理食塩水を2日間皮下投与し、投与前後の動物の行動の変化を解析し、心臓痛モデルとしての妥当性を検討した。【結果】ISOを投与した実験群では、投与前に比べて、また溶媒である生理食塩水を投与した対照群に比べて、投与後30~60分で自発行動時間が有意に減少することが分かった(P<0.05)。また、すでに報告されているような(Rona et al., 1959)、虚血時に体を横たえるような特徴的な姿勢がみられた。現在、ISO投与後に見られた自発行動時間の減少が、心臓の虚血による疼痛に関与しているかどうか検証するために、自発行動時間が減少しているときに、疼痛の指標として用いられるc-fosの発現が増加していないか検討している。【考察】これまで、心臓の痛みを解析するための有用な動物モデルはほとんど確立されていない。本年度の研究によって、ISOを投与すると心臓の虚血にともなってラットの自発行動が抑制され、虚血時に特徴的な姿勢がみられることが明らかとなった。この自発行動の抑制や特異的な姿勢が心臓の痛みに直接関わっているか、c-fosの発現を検討中である。また、拮抗薬を投与し、自発行動の変化や、c-fosの発現に変化が見られるかどうか確認することで、ASIC3がISO投与による心筋虚血による疼痛に関与しているかを明らかにすることを計画しており、本年度の結果は本研究計画を推進する上で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、冠状動脈結紮を行う急性モデルを実施したが、虚血による行動学的変化が明瞭に見られなかった。その改善のために結紮手技の検討を加えたが、明瞭な行動学的変化は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
急性モデルは当面は行わずに、イソプロテレノールを用いた慢性モデルの解析を行う。イソプロテレノール投与で、自発行動の変化がみられたので、これが疼痛によるものか、また定量化をするために、イソプロテレノール投与時の延髄および脊髄でのc-fosの発現を検討する。さらに、拮抗薬を投与することで、自発行動の変化や、c-fosの発現に変化が見られるかどうか確認することで、ASIC3がイソプロテレノール投与による心筋虚血時による疼痛に関与しているかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は急性モデル作成において、明確な結果が得られなかった。そのため、急性モデルで本来使うべき研究費を使うことができなかった。次年度は、急性モデルは当面行わずに、イソプロテレノールを用いた慢性モデルの解析を行う。まず、本年度に見られたイソプロテレノール投与による自発行動の変化が疼痛によるものなのかを確定するために、c-fosを形態学的に定量化するため、その抗体や試薬・染色キットを中心に購入する予定である。また、モルヒネを投与したうえで、イソプロテレノールを投与したり、ASIC3の拮抗薬であるAmilorideを投与する行動薬理実験も行うので、そのための試薬などを購入する。さらに、侵害受容に伴ってDRGに特異的に発現するp-ERKを染色する抗体やキット、虚血の程度を定量化するキットなどを購入することを計画している。
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