研究課題/領域番号 |
23790640
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山口 豪 金沢大学, 医学系, 助教 (60532182)
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キーワード | 虚血性心疾患 / 心臓痛 / ASIC3 / イソプロテレノール / 心臓知覚神経 / 行動解析 / c-fos / ECG |
研究概要 |
【目的・方法】昨年度は先行研究に基づきイソプロテレノール(Iso)を2回投与する方法を行ったが、痛みの評価が複雑になり、作成方法の再検討を要した。本年度はIsoまたは溶媒である生理食塩水(Sal)を1回投与し、投与前後の動物の特徴的行動の変化(Rona et al., 1959)、および脊髄(C7~T5)で神経興奮を示すc-fosの発現を検討した。虚血の確認は心電計を用いた(Hiramatsu et al., 1970)。また、その行動が痛みを反映するかの確認のために、モルヒネ投与下でIsoを投与し、特徴的行動の変化を検討した。 【結果】Iso投与後ST低下がみられた。Sal投与では投与前後で特徴的行動の変化は見られなかったが、Iso投与では投与後15~30分の間が最も特徴的行動回数が多く、その後徐々に減少した。またC7~T5でのc-fos発現はC7からT1にかけて発現数が増え、T1が最も多く、その後徐々に発現数は減少した。さらにモルヒネ投与下でIsoを投与すると、特徴的行動は抑制される傾向にあった。 【考察】Isoによる虚血条件下でラットは特徴的行動をとり、その行動がモルヒネにより抑制傾向にあるため、痛みへの関与が行動学的に示された。また、Iso投与下で神経興奮のおこる脊髄レベルがラットの心臓での知覚神経の分布に一致することから、形態学的にIsoによる神経興奮が心臓の知覚に関与することが示唆された。現在、この特徴的行動とc-fos発現の変化を指標に、ASIC3がIso投与による心筋虚血によっておこる疼痛に関与するかを明らかにすることを計画しており、本年度の結果は本研究計画を推進する上で重要である。 【結論】特徴的行動とc-fosの発現を指標としたIsoによる虚血モデルは、痛みのモデルとして有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Isoの濃度、投与回数、評価方法などの実験条件を決めるのに時間を要した。また、脊髄におけるc-fos発現を検討する際、予想以上に心臓の知覚神経の分布が広く、その評価に検討を要した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においてIso投与によって特徴的行動がみられ、これがモルヒネによって抑制されたため、この特徴的行動の回数を痛みの評価方法とすることができた。 今後は拮抗薬を投与することで、特徴的行動の回数や、c-fosの発現に変化が見られるかどうか確認し、ASIC3がIso投与による心筋虚血時による疼痛に関与しているかを明らかにする。また、延髄孤束核におけるc-fosの発現を調べ、迷走神経に伴行する心臓知覚神経の関与についても検討する。さらに、脊髄神経節および迷走神経下神経節においてp-ERKをマーカーにしてASIC3抗体と免疫2重染色することにより、心臓の虚血を侵害刺激として受容しているニューロンを同定し、そのニューロンがASIC3を発現しているか調べる。同時に、心臓においても知覚神経終末においてASIC3の発現の有無と分布を共焦点レーザー顕微鏡を用いて明らかにすることを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は研究の進行上遅れが生じたため、行っていない実験があり、繰越金が生じた。次年度はASIC3の拮抗薬を用いた解析が主となるため、ASIC3の拮抗薬やASIC3の抗体、c-fosの抗体などの試薬の購入を主に計画している。
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