研究課題/領域番号 |
23790640
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山口 豪 金沢大学, 医学系, 助教 (60532182)
|
キーワード | Amiloride / 免疫組織化学 / 薬物モデル / モルヒネ / 心電図 / 心虚血 / 侵害刺激 / 痛み |
研究概要 |
【目的・方法】昨年度の研究では、虚血性心筋傷害を惹き起こすことが報告されている。イソプロテレノール(Iso)を50 mg/kg単回投与すると、特異的行動と脊髄後角におけるc-Fos発現が増加することが分かった。そこで、Iso投与時に起こるこれらの反応が心臓痛を反映するものなのか、そしてそれらに関与する分子を明らかにすることを今年度の目的とした。心臓虚血の確認は心電図およびTTC染色で行った。モルヒネ前投与下がIso投与による特徴的行動と、c-Fos発現に変化を起こすか調べた。また、心臓痛への関与が報告されているASIC3が本モデルに関与しているかを確認するために、ASICsの拮抗薬Amiloride(Ami)を投与し、行動解析とc-Fosの発現を調べた。 【結果】Iso投与によりげっ歯類の心筋虚血に特徴的な波形(ST低下)が見られた。TTC染色は例数が少ないため、今までのところ明確な結果は得られていない。モルヒネ前投与により、Isoによる特異的行動と、脊髄後角におけるc-Fosの発現が有意に減少した。また、Amiの前投与でもIsoによる特異的行動とc-Fosの発現が減少する傾向にある。 【考察】Isoによる虚血は心電図にて確認できた。一方心臓痛に関しては、Iso投与後に特異的行動や、c-Fosが有意に上昇し、さらにモルヒネで抑えられる点から、Iso投与によって心臓痛が起っていると考えられる。また、現在のところAmiにより特異的行動とc-Fos発現が減少する傾向にあることから、Isoによる心臓痛にはASIC3が関わっていることが示唆される。 【結論】Iso投与により虚血を引き起こされ、心臓痛が生じる。この心臓痛にはASIC3が関与していることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モルヒネやAmiの濃度、投与時間などの実験条件を決めるのに時間を要した。また、免疫組織化学染色においてトラブルが生じ、改善に時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究においてはモルヒネ前投与実験からIso投与によって、心臓痛が起こっていることが確認できた。さらに、Ami前投与実験から、この心臓痛にはASIC3の関与の可能性が分かった。 今後はAmi前投与による行動解析と脊髄後角c-Fos免疫組織学解析の例数を増やす。さらにDRGにおいて、ASIC3とp-ERKの蛍光2重免疫組織化学染色を行い、心臓知覚神経における心臓痛の受容にASIC3が関与していることを実証する。 さらにこのモデルの病態を明確にするため、血清逸脱酵素であるクレアチンキナーゼの変化をみると同時に、心筋梗塞の梗塞巣を染色するTTC染色や虚血によって誘導される転写因子であるHIF-1αの心筋での発現をを定量化することを計画している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた電子顕微鏡による解析を行わなかったことと、国際学会へは参加できなかったことから次年度使用額が生じた。 抗体などの消耗品の購入と英文校閲料にあてる予定である。
|