反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は難治性疼痛を緩和することが分かってきているが、実際の臨床における治療法として確立するためには、新規刺激法を含め最善な刺激パラメータの決定が重要である。本研究では、当初、中枢性脳卒中後疼痛のラットモデルを作成し、新規刺激パラメータでのrTMSを予定していた。ラットに磁気刺激を定量的に与える実験系と脳表血流の測定系を確立したが、モデルラットの作製は難易度が高く、まだ完成していない。 そこで、まず安全性の確立している範囲の各刺激法を疾痛患者に行い、除痛効果を判定した。5名の神経障害性疼痛患者に縦来刺激、リバースドカレント刺激、閾値上刺激、シータバースト刺激、シャム刺激を行ったところ、従来刺激とリバースドカレント刺激が最も良好な除痛効果を示す傾向が見られた。今のところ従来刺激を超える刺激パターンは見つかっていないものの、従来刺激かリバトスドカレント刺激が最善な条件に近いものと考えられる。 多くの慢性痛は実験的な誘発痛とは異なり、持続的に疼痛が存在し、その状態そのものを検討する必要がある。次に5名の神経障害性疼痛患者にrTMS(従来刺激パターン)前後に安静時fMRIを撮影し、安静時における脳内の機能的結合を検討した。刺激部位(一次運動野)との機能的結合はrTMSにより変化はなく、Default mode networkや疼疼痛関連領域、情動関連領域などで機能的結合の変化が見られた。この結果から、従来から推定されているように、刺激部位より遠隔部で、脳の様々な領域にrTMSが作用していることが示唆された。安静時fMRIの結果をもとに、rTMSの除痛機序の解明や、効果予測などが可能になると考えられる。
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