研究課題
低分化型胃癌の腹膜播種モデルを作製し、腹腔内の癌増殖の観察と平行して経時的な疼痛評価を行ったところ、移植後 4 週目において顕著な疼痛行動が認められた。疼痛行動が認められたマウスの脊髄後根神経節を摘出し、μ-opioid receptor (MOR) 発現量の変化を解析したところ、癌移植群において有意な減少が認められた。次に疼痛行動に対するモルヒネの効果を解析したところ、高用量のモルヒネを投与しても部分的な鎮痛効果しか認められなかった。さらに同条件下における脊髄後根神経節の各種ケモカインシグナルの発現変化を解析したところ、腹膜播種による大きな変化は認められなかった。これらことから腹膜播種病態下における MOR の機能低下には、ケモカインシグナルは関与していないと考えられる。一般に MOR は、substance P などの一次求心性神経末端に局在し、痛み物質の遊離を抑制する。そこで脊髄後根神経節の substance P 陽性細胞数をカウントしたところ、癌移植群では、substance P 陽性細胞数が増加していた。さらに substance P とMOR の共局在を解析したところ、対照群ではほとんどの substance P 陽性細胞に MOR は発現しているのに対し、癌移植群では 40 % 程度にまで減少していた。これらのマウスに substance P 受容体拮抗薬を髄腔内投与したところ、疼痛行動は有意に抑制された。以上のことから、癌の腹膜播種に伴う腹痛には、substance P の発現増加が関与していることが考えられ、このような痛みには、substance P 受容体拮抗薬が有効である可能性が示唆された。また、腹膜播種病態下では MOR の発現が減少していることから、臨床において腹膜播種患者にモルヒネを高用量で使用することは控えるべきであることが強く提唱できる。
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