本研究では、血行動態反応の不明な、痛みや御礼感覚の脳機能研究において困難とされる関心領域の時系列信号抽出に対し、二元的回帰分析を応用した新たな手法を導入し、温冷感覚の中枢性機序、知覚学習における新知見の獲得に寄与した。これらの研究結果の一部は、第36回日本神経科学大会や北米神経科学学会2013等にて報告された。 本研究を通じて、提案手法を用いる上では、前処理を含めたデータ解析過程全体を通じての、さらなる検討の必要性が存在することを認識した。また同様に、本研究の過程において、本提案手法は、空間的な信号欠損を伴う時系列データにおいて、簡便かつ低コストな信号要約の可能性を持つ事についても認識を得られた。これは換言すれば、脳卒中後疼痛患者など、現在、機能的磁気共鳴画像法による非侵襲的脳機能研究の対象としては取り扱う事の困難な、脳病変を有する患者を、研究対象として含められる可能性が示唆されたと同義であり、今後の研究の発展性に期待が持てる。 さらなる応用範囲拡張へとつながらる、発展的な産物の得られた本研究は、全体を通じて、大変意義深いものとなった。以上を踏まえ、今後もさらに、痛みや温冷感覚の脳機能研究と本解析手法の発展に資したい。
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