研究課題/領域番号 |
23790656
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松井 弘樹 群馬大学, 保健学研究科, 助教 (20431710)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 内臓肥満 / 糖尿病 / 脂肪酸分画 / 心筋傷害 / 動脈硬化 / 飽和脂肪酸 / 不飽和脂肪酸 / 脂肪酸触媒酵素 |
研究概要 |
申請者らはこれまで、肥満や糖尿病患者で見られる遊離脂肪酸の量的増加だけでなく、脂肪酸分画の質的な変化と心血管イベントの発症リスクとの関係に着目してきた。その結果、飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸に変換する酵素であるStearoyl-CoA Desaturase-1 (SCD1)が、飽和脂肪酸による心筋傷害や血管石灰化に対して抑制的に働くことを明らかにした[PLoS ONE 2012]。また、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の鎖長を伸長させる酵素であるElongation of long chain fatty acid 6 (Elovl6)が動脈硬化初期の新生内膜で著明に発現が増加していること、平滑筋細胞にElovl6を過剰発現させると、血管石灰化や細胞増殖に対して抑制的に働いていることが明らかとなった。以上より、脂肪酸分画を調節する酵素であるSCD1、Elovl6の各組織における発現や活性が心血管病予防に重要であることが示唆された。実際に、糖尿病・肥満モデルラットの心臓においてSCD1の発現が増加し、飽和脂肪酸分画の減少、不飽和脂肪酸分画の増加が認められたが、心機能や組織像は正常型を示した。一方、SCD1欠損マウスでは飽和脂肪酸分画が増加、不飽和脂肪酸分画が減少、Elovl6欠損マウスでは飽和脂肪酸のパルミチン酸が増加し、不飽和脂肪酸のオレイン酸、リノール酸の減少が認められた。また、siRNAによりSCD1、Elovl6をノックダウンすると、欠損マウスと同様の分画の傾向が認められ、飽和/不飽和脂肪酸分画比の増加に伴い、アポトーシスや炎症性サイトカイン、血管石灰化関連因子の増加が認められた。したがって、組織内の飽和/不飽和脂肪酸比が病態の進行に関与していると考えられ、今後、他の病態モデルにおける脂肪酸分画比や、欠損マウスで病態の揺さぶりをかけた際の表現型解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本学では、文科省の大学教育推進プログラムにも採択された「チーム医療教育」を保健人材の養成活動の柱として、重点的に取り組んでいる。その国際推進活動の一環として、2011年9月~2012年2月の半年間、世界保健機関(WHO:スイス、ジュネーブ)にて長期海外研修していたため、本研究に従事する時間が十分に取れなかったことが達成度の遅れにつながっている。ただ、研究室に所属する大学院生に指示を出して、本件に関する実験を随時進めてもらっていたので、その間、全く研究が滞っていたということではない。また現在、SCD1、Elovl6欠損マウスを繁殖させているが、SCD1欠損マウスはホモ同士での交配が困難で、ホモ×ヘテロでの掛け合わせにより、実験に必要な十分な匹数のマウスが得られなかったこと、Elovl6ノックアウトマウスは出生後3~4週程度で死亡するマウスがしばしば認められるため、十分な匹数のマウスが得られなかったことも達成度の遅れにつながっている。
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今後の研究の推進方策 |
SCD1、Elovl6欠損マウスに関しては、これまでの繁殖体制からより交配の数を増やして、実験に必要なホモ欠損マウスを確保することが大きな課題となる。病態モデルマウスの作成に関しても上記のとおり、これまで時間が十分に取れずに出来なかったことから、早急に進めていきたい。それとともに、平成24年度の研究計画に記した臨床データの解析も、大学病院および共同研究の先生方にご協力いただき、随時、進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は前述のとおり、長期海外研修で半年間、大学を不在にしており、科学研究費の交付から研修開始までの時間がほとんどなかったため、研究費を予定どおり使用できなかった。したがって、平成24年度は平成23年度分の研究計画に記載した物品も購入する予定である。・病態モデル動物、欠損マウスなどの心臓・血管・血液サンプル、培養細胞サンプル、および臨床検体における血液・組織内脂肪酸分画の測定・臨床検体における酸化ストレス項目、炎症マーカーなどの測定・マウス飼育費、動物飼育用特殊飼料・PCR用試薬、抗体、細胞培養用試薬など
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