研究課題/領域番号 |
23790658
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
高田 宗樹 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40398855)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 衛生 / 立体映像 / 生物・生体工学 / 生理学 / 応用数学 |
研究概要 |
(1)視機能同時計測システムの開発: 高田宗樹(研究代表者)は立体映像視認時における両眼の輻輳と水晶体の焦点調節の関係を明らかにするために、水晶体調節(屈折率)と両眼の輻輳焦点距離を同時に計測する装置(以下、視機能同時計測システム)を開発した。ここでは、両眼を開放したまま調節を測定することができるグランド精工社製の透過型測定機(両眼開放オートレフケラトメーターWAM-5500)及び,輻輳距離を測定することができるナックイメージテクノロジー社製のモバイル型測定機(アイマークレコーダーEMR -9)を組み合わせて使用した。(2)視覚刺激用映像の開発: 小室貴弘(研究協力者)は実証研究(重心動揺検査)に用いる立体映像 (III)を作成した。(3)若年健常者に対する実証研究: 高田宗樹(研究代表者)、松浦康之(研究協力者)は 8例の若年健常者を対象として、以下の対照実験を伴った実証研究を行った。被験者から1 mの距離に設置された円偏光用ディスプレイRDT233WX-3D (23 インチワイド)上に市販の両眼視立体映像(II)およびその(片眼視用の)2D映像(I)を提示した。ここで、映像の提示順についてはランダムとし、それぞれの映像を提示する実験は別の日に行った。被験者に映像を1時間連続して視聴させ、心電図を医療電子科学研究所製のワイヤレスセンサー(RF-ECG)により計測した。視聴開始後20分おきに(1)座位重心動揺を記録するとともに、(2)右眼の水晶体調節(屈折率)と両眼の輻輳焦点距離を同時に計測した。尚,計測には(1)項で開発した計測システムを用いた。この計測の後、フリッカー検査、 Visual Analog Scale、立体映像(III)による視覚刺激中の立位重心動揺、SSQ(Simulator Sickness Questionnaire)の順に計測・記録を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若年健常者を対象とする実証研究で計測を終えた例数が目標を下回っているものの、次年度以降に行う予定の分析に着手し、いくつかの研究成果につながっている。 申請者らはこれまで短時間(1~3分間)の立体映像視認が体平衡系に与える影響について調査、検討を行い、動揺図の数理解析によって軽度の「映像酔い」の計量化について知見を得ている。高田宗樹(研究代表者)は今年度に実施した実証実験を踏まえて、数理解析・統計解析を行った。検査項目ごとに連続視聴時間と映像の種類を因子とする2元配置分散分析を行い、比較・検討を行った。座位重心動揺および主観評価検査については分析が終了しており、成果発表を行っている。 本研究では、長時間(1~2時間)の立体映像視認が生体に与える影響について調査、検討を行い、安全な立体映像の視聴に関するガイドラインを提言することを目標としているため、被験者が長時間(1~2時間)視聴する立体映像として市販の立体映画を用いることにした。また、これまでに申請者らが短時間の立体映像視認が生体に与える影響について調査を行った際に、体平衡には履歴が数分しか残らないことが分かっているため、立位重心動揺計測時に何らかの立体映像による視覚刺激を行う必要性がある。「映像酔い」を引き起こす原因に、通常行われる2D/3D変換における単眼立体情報と両眼立体情報の間の矛盾が指摘されていることから、前項(2)においては焦点深度ごとに両眼立体情報の付加を行うPower 3D法により視覚刺激映像(III)を構成した。これは、前述した短時間の立体映像視認が生体に与える影響について調査を行ったときに用いたものをもとに画像提示環境を考慮して作成された。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、座位重心動揺および主観評価検査において、立体映像視聴後20分にいくつかの指標が有意に増大しており、立体映像視認に伴う「眼疲労」や「映像酔い」が生じ始めている可能性がある。分析が途中になっている右眼の水晶体調節と両眼の輻輳焦点距離の比較を行うとともに、立位重心動揺の数理解析・統計解析を行い、その裏付けをとるだけでなく、「眼疲労」や「映像酔い」が生じる機序を明らかにする。この結果を受けて、計測間隔の見直し、立体映像曝露時間の短縮化や検査項目(右眼の水晶体調節、両眼の輻輳焦点距離フリッカー検査、 Visual Analog Scale、座位・立位重心動揺検査、SSQ)の簡略化を行いたい。その上で、20例以上の若年健常者を対象とした実証研究を行い、安全な立体映像の視聴に関するガイドラインを提言することを目標とする。 また、立体映像視認に伴う「眼疲労」や「映像酔い」については、映像を注視する際の視線の固定などが起因することも考えられることから、購入予定のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用して、映像(I)および(II)を提示する。ここで、映像の提示順についてはランダムとし、それぞれの映像を提示する実験は別の日に行う。実験プロトコルは基本的には現行のものに従うが、前述したように計測間隔の見直し、立体映像曝露時間の短縮化や検査項目の簡略化を行う可能性がある。 以上の実証実験に関する統計解析および数理解析を行う。得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1) 設備備品費:立体映像視聴に伴う眼疲労や映像酔いが生じる機序を明らかにすることを目標にしており、「映像メディア関連図書」を購入し、最新の情報を得ることは重要である。2) 消耗品費: 「ディスポ―サブル心電図電極」は、本研究に関する実験に必要な物品である。「事務用消耗品類」や「論文別刷代」は研究成果を論文誌に発表する際、不可欠である。3) 旅費: 本研究に関する成果発表の目的で韓国(KJMR2012)、米国(IEEE EMBS2012)、および国内での研究発表を行う。また、研究協力者との連携を図るために、国内の研究打ち合わせは不可欠である。4) 謝金等: 本研究に協力してもらう被験者に謝金として渡す為に必要である5) その他: 研究発表を広く発表するための「英文校閲」、「投稿料」は不可欠である。また、3)項と関連して、「国際会議・学会参加費」を要する。研究協力者との連携を図るために「通信費」や「運搬費」が必要である。また、収集した情報を共有するために「複写費」を要する。
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