研究課題/領域番号 |
23790662
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
頼藤 貴志 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (00452566)
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キーワード | ヒ素 / 食中毒 / 健康影響 / 疫学 / 環境保健 |
研究概要 |
1955年夏ヒ素を混入したミルクによる食中毒が西日本中心に発生した。乳幼児期の一点曝露での食中毒は歴史上ないことであり、乳幼児へヒ素がどのような影響を及ぼしたのかを科学的に解明することが、今後このような被害を防止する上で貴重な教訓となり得る。しかしながら、従来の研究では、神経系やがんマーカー等への影響の詳細な研究は不十分であった。今回発達期にヒ素曝露を受けた集団を対象として、ミルク飲用と発がん・神経学的所見・各種生物学的マーカー・臨床データとの関連を検討するパイロット研究を行っている。 平成24年度は具体的には、岡山県にてヒ素ミルク被害者の追跡を行っている岡山協立病院、水島協同病院、井村医院の協力を得て調査を行った。岡山協立病院(井村医院を含む)、水島協同病院にてそれぞれ約25名(ヒ素曝露群12~13名、コントロール12~13名)を対象とし、予定していた計50名の調査を終了した。それぞれの対象者から、身体所見(体重、身長、血圧)、心血管系機能評価(心電図)、神経所見、神経認知行動学的検査、神経生理学的検査、血液所見(血算、血液生化学検査)などの所見を取得した。神経認知行動学的検査では、Finger tapping、Grooved pegboard、WAIS: Block Designs and Vocabulary、Wide Range Assessment of Memory and Learning: Design memory subtestを行った。神経生理学的検査では、神経伝導速度(両手の運動神経・正中神経のみ)・視覚誘発電位(Flash VEP)・聴覚脳幹誘発電位を行った。また、尿中ヒ素濃度測定、エピジェネティック(epigenetic)マーカー測定の為の生体資料も採取し、冷凍保存を行った。現在は収集したデータの整理を行っている所である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書で予定していた通り、対象者50名の参加を得て、予定していた臨床データ、神経所見、神経認知行動学的所見、神経生理学的所見、生体資料の凍結を行うことが出来た。但し、平成24年度中に、全ての解析や生体資料の測定も行ってしまう予定であったが、年度内に終了することが出来なかった。その為、「おおむね順調に進展している」と自己評価できるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に従い、飲用群とコントロール群に分け、身体所見(体重、身長、血圧)、心血管系機能評価(心電図)、神経所見、神経認知行動学的検査、神経生理学的検査、血液所見(血算、血液生化学検査)の比較を行い、それらの所見とヒ素曝露の関連を検討する。また、尿中ヒ素濃度測定、エピジェネティック(epigenetic)マーカー測定の為に、生体資料を研究協力機関であるアメリカのNational Health Instituteへ空輸を行う。研究成果に関しては、英語論文発表とひかり協会への報告書提出を行う。また、ひかり協会と協議の上、しかるべき所に公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
尿中ヒ素濃度測定、エピジェネティック(epigenetic)マーカー測定の為の生体資料を冷凍保存、また空輸する為の費用として用いる。また、報告書作成の為の費用とする。
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