研究課題/領域番号 |
23790663
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鹿嶋 小緒里 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30581699)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 大気汚染 / 黄砂 / 地理情報システム(GIS) / 時系列解析 / アジア地域 / 国際情報交流 |
研究概要 |
1. 大気汚染の個人曝露予測のための時空モデルの構築および、衛星からの情報を用いた時空間モデルの向上を試み:大気汚染の個人曝露予測のための時空間モデルの構築を行う。さらに、これらモデルを向上するために、衛星からの情報を投入し、時空間・衛星モデルを作成した。具体的には、まず、黄砂の日々の濃度を国立環境研究所より5年間分のデータ、大気汚染の日々の濃度は中国地方の各市区町村より10年間分のデータをそれぞれ入手し、地理情報システム上でデータを結合後、モデル構築を実施した。そして、これら作成したモデルは、第23回国際環境疫学会年次総会(スペイン)で、発表を行った。総会では、大気汚染の曝露測定評価分野におけるディスカッションセッションに当該研究が選定され、口頭発表を行う機会を得た。このセッションでは、アジアからの発表は1本のみであり、環境疫学が進む欧米諸国に対して、アジアの知見を発信し、世界の大気汚染研究者と相互に議論を行った。さらに、発表とは別に、アジアにおける多国間共同の大気汚染を中心とする環境疫学研究の実施について研究者間の会合に参加をし、アジアにおける大気汚染研究ネットワークの構築に参加する機会を得た。2. 黄砂の影響を含む地理的特徴を考慮した大気汚染の大規模健康影響評価:上記1で作成したモデルをベースに、黄砂による健康への影響評価を実施するため、健康アウトカムデータ(死亡個票と出生票)の目的学申請を厚生労働省へ提出し、中国地方の10年間のデータを入手した。それら健康アウトカムと、1.で収集した大気汚染情報を結合し、さらに、日々の気象データも結合を行い、解析のためのデータセットを作成した。平成23年度は、これらデータセットを用いて、まずは黄砂と死亡に関する健康影響評価を、時空間モデルを活用して取り組み、現在第1次解析が完了し、結果を取りまとめた内容を、国際誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・大気汚染の個人曝露予測のための時空間モデルの構築:これまで、計画は予定通りに達成している。平成23年度において、個人曝露予測のための時空モデル構築は、予定していたデータの入手が完了し、データセット作成を行い、モデル構築までのプロセスはすべて完了した。・衛星からの情報を用いた時空間モデルの向上を試みる(時空間・衛星モデル構築):衛星画像MODISを入手し、上記構築したモデルの向上を試みた。上記、時空間モデルとあわせて構築した時空間・衛星モデルは、国際学会で発表を行った。・黄砂の影響を含む地理的特徴を考慮した大気汚染の大規模健康影響評価を実施:大規模健康影響評価は平成24年度に予定していたが、平成23年度にデータセットの準備が完了し、死亡に関する健康影響評価に一部前もって着手することができた。結果、黄砂が死亡に与える影響の全体像を把握することができ、次年度解析のための1次結果を得た。・中央政府が管理する情報を活用した疫学研究のアジアにおける活用事例の提示:国際環境疫学学会年次総会で、大気汚染の個人曝露予測のための時空モデルの学会での発表とは別に、アジア地域で大気汚染研究にかかわる研究者が開く会合に参加する機会を得た。この会合では、平成23年度はまだ参加のみとなり、当該研究成果の発信までは到達していないが、目的の一つである「中央政府が管理する情報を活用した疫学研究のアジアにおける活用事例の提示」を実施するための、研究者ネットワーク構築に参加することができた。これら参加できた研究者ネットワークを通して、平成24年度は、当該研究の紹介等を実施していく予定である。 一部、平成23年度に購入予定だった解析のソフトを平成24年度に持ち越している。これら解析ソフトに関しては、当該研究の成果をまとめるものに必要となるものであり、平成24年度に持ち越したことによる研究の遅延は発生していない。
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今後の研究の推進方策 |
・日本の地理的特徴と黄砂の影響を考慮した死亡に関する大規模健康影響評価:平成24年度は、昨年度構築した個人曝露予測のための時空間モデルを利用し、黄砂を含む大気汚染の地理的特徴を考慮した健康影響評価を行う。平成23年度に死亡に関しての健康影響評価はすでに着手しており、第1次解析結果が出ているが、この解析結果をベースに第2次解析を実施する予定である。・日本の地理的特徴と黄砂の影響を考慮した周産期に関する大規模健康影響評価:平成24年度はさらに、昨年度入手している健康アウトカム情報の出生票と、これまで作成した時空モデルを利用して得た大気汚染個人曝露情報を結合し、新たに、周産期における健康影響評価を実施する。・大気汚染の個人曝露予測のための時空間モデルの向上:さらに、平成23年度に構築した、大気汚染の時空間モデルを、平成24年度に入手予定の道路情報を含む、地理的な情報との新たに結合を試みて、大気汚染曝露モデルのさらなる向上をはかる。・中央政府が管理する情報を活用した疫学研究のアジアにおける活用事例の提示:上の項目で実施した健康影響評価に関する成果は、第24回国際環境疫学会年次総会(アメリカ)で、発表する予定である。さらに、国内における大気汚染に関する研究者と協力体制を構築しつつ、昨年度参加したアジア地域における大気汚染研究者ネットワークの研究者とも、これまでの研究成果や知見の共有を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、当該研究で必要となるソフトウエア、データの購入と、研究打ち合わせによる国内旅費、国際学会発表のための海外渡航費をはじめ、成果報告を発表するための論文の英文校正代で利用する予定である。さらに平成23年度に購入予定としていた当該研究の解析に利用するソフトとデータが、昨年度の研究費の全額支払いが確定した時期の関係で、新バージョンを利用すべく、一部購入を平成24年度前半へ持ち越した。これら持ち越した解析ソフトと、データの購入を平成24年度前半に予定している。
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