平成23年度では①大気汚染の個人曝露予測のための時空間モデルの構築および、②衛星からの情報を用いた時空間モデルの向上を試み(時空間・衛星モデル作成)を実施した。具体的には、まず、黄砂の日々の濃度を国立環境研究所より入手し、大気汚染の日々の濃度と地理情報システム(GIS)上でデータを結合後、MODIS衛星情報を投入しモデルを構築した。そして、これら作成したモデルは、第23回国際環境疫学会年次総会(スペイン)で、発表を行った。さらに、発表とは別に、アジアにおける多国間共同の大気汚染を中心とする環境疫学研究の実施について研究者間の会合に参加をし、アジアにおける大気汚染研究ネットワークの構築に参加する機会を得た。平成24年度では前年度に作成したモデルを用いて、③黄砂の影響を含む地理的特徴を考慮した大気汚染の大規模健康影響評価を実施した。本評価によって、黄砂がいかに(浮遊粒子状物質の影響とは独立して)死亡に影響を与えているかを、黄砂(2005年3月から2010年10月までの日々の濃度)の影響を時系列分析で中国地方47都市において評価を実施した。結果として、黄砂は(浮遊粒子状物質の影響とは独立して)、心疾患(虚血性心疾患や不整脈など)や肺炎による死亡を増加させることが明らかとなった。本研究内容は、国際誌(Occupational and Environmental Medicine)に掲載された。さらに、これら研究成果は研究目的④中央政府が管理する情報を活用した疫学研究のアジアにおける活用事例の提示を行うため、第24回国際環境疫学学会年次総会(アメリカ)で発表を行った。加えて、同学会の東アジア地域総会(マレーシア)に参加をし、総会の参加者と本研究に関する成果を共有するとともに、今後の展開について打ち合わせを行い、アジア地域との連携を強化するための研究者基盤つくりを取り組んだ。
|