研究概要 |
本研究において得られた重要な知見は、多発性骨髄腫においてヒトゲノム上に存在する反復配列LINE-1(Long interspersed nuclear element-1)のDNA異常低メチル化が認められ、それがDNA配列の欠失と関連し、染色体不安定性などをもたらし予後との相関も見られる、という点である。対照として用いた正常形質細胞、前骨髄腫状態であるMGUS(本態性M蛋白血症)症例と比べ多発性骨髄腫症例における形質細胞は、LINE-1、Alu、Satellite-alphaなど複数の反復配列の低メチル化が顕著であった。このことはメチル化されたDNA配列を次世代シークエンサーで読み取るMethyl Binding Domain-Sequencing法(MBD-seq)でも確認された。アレイCGH(Comparative Genomic Hybridization)法によって調べられた多発性骨髄腫のDNA配列の欠失・切断頻度とLINE-1の低メチル化には線型の相関が見られ、重要な染色体異常である13番染色体の欠失などとも関連が見られた。多発性骨髄腫において高頻度にDNA配列の切断が認められる部位には、LINE-1配列が多く含まれることが示唆され、このことが低メチル化とDNAの切断頻度を関連づけている可能性がある。さらには、LINE-1メチル化レベル36%をカットオフとして2群に分けた際に、低メチル化群では有意に予後不良であることが示された。以上の結果は、Aoki Y, Nojima M, et.al. Genome Medicine 2012;4:101として報告した。当初予定していた生活習慣に関わる多発性骨髄腫の発症要因の探索については、大規模コホート研究の結果の検討をもってこれを行うこととし、現在解析中である。その結果は今後論文等で報告する。
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