研究概要 |
「前立腺がん遺伝子多型研究」の対象者については、Short food frequency questionnaire (S-FFQ)の解析と、PPAR-γ遺伝子多型(Pro12Ala: rs1801282、C161T: rs3856806)の分析を終了した。対象者を、病理結果から前立腺がん症例(110名)、生検陰性症例(214名)に分類し、比較・検討した。S-FFQ から推定した1日あたりの脂肪摂取量の中央値で対象者を2群に分け、各遺伝子多型の前立腺がんへの作用を、脂肪摂取量との相互作用を含めて、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。前立腺がん症例群-生検陰性症例群間で、脂肪摂取量に差を認めなかった。遺伝子多型Pro12Alaの分布は両群間で差を認めなかったが、C161Tは前立腺がん症例群で、Tアレル保持者が有意に少なかった(OR: 0.53, 95%CI: 0.31-0.90)。C161T遺伝子多型のTアレルを持ち、脂肪摂取の少ない群で、前立腺がんリスクの低下(OR: 0.32, 95%CI: 0.13-0.79)を認めたが、有意な相互作用は認めなかった(p for interaction: 0.13)。以上より、PPAR-γ遺伝子多型(C161T)は、前立腺がんリスクの低下と関連していた。PPAR-γ遺伝子多型(C161T)のTアレル保持者に対しては、低脂肪食を指導することにより、前立腺がんの一次予防が期待される。一方、本研究の対照群を登録する「岡崎研究」に関しては、平成23年度中に参加者の研究登録を完了した。最終的な研究登録者数は、7,587名(男性4,176名、女性3,411名)。今後、「岡崎研究」の登録者から、前立腺がんのない男性(約300名)を対照群として抽出し、「前立腺がん遺伝子多型研究」から登録した前立腺がん症例との症例-対照研究を施行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「前立腺がん遺伝子多型研究」から登録した症例群については、栄養摂取状況調査に用いたShort food frequency questionnaire (S-FFQ)の解析のみならず、PPAR-γ遺伝子多型(Pro12Ala: rs1801282、C161T: rs3856806)とアディポネクチン遺伝子多型(G276T: rs1501299)の解析を完了した。また、結果の分析までには至っていないが、血清中の全脂肪酸組成比についても、測定を終了している。以上より、「前立腺がん遺伝子多型研究」からの対象者については、ほぼ、研究計画通りに研究が進んでいる状況と考えている。一方で、「岡崎研究」については、7,587名(男性4,176名、女性3,411名)にのぼる研究参加者の登録を終了しているが、対照群の抽出とデータ解析までは、施行できていない。大規模な研究参加者のデータ入力および、データクリーニングに時間を要していることが、主たる原因となっている。
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