研究課題/領域番号 |
23790671
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
石原 加奈子 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (60515849)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | MRSA / 獣医療 / 予防因子 / 分子疫学 |
研究概要 |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、人の医療現場における院内感染の原因菌である。近年は、手術や入院歴のない人から市中感染型MRSAが分離され、新たな問題になっている。さらに、臨床獣医師らにおいて、高いMRSA保菌率が認められ、獣医療や伴侶動物を介したMRSAの感染拡大を防ぐ必要がある。獣医師等の職業上のMRSA感染リスク因子と予防因子を特定するため、調査を行った。MRSAの分離材料として獣医師らの鼻腔スワブを収集し、診療頭数など診療内容6項目、MRSA症例との接触歴2項目、手指消毒などの衛生管理7項目、その他18項目について調査した。獣医師50名のうち、6名(12%)からMRSAが分離された。MRSA保菌者と陰性者の疫学情報を解析すると、保菌者の診療頭数は平均83頭で、陰性者(平均40頭)より有意に多かった(P<0.05)。一方、臨床経験年数、手術頭数、抗生物質投与頭数などに有意な差は認められなかった。今後、分離されたMRSAの遺伝子型と疫学情報のより詳細な解析を進める予定である。また、先行して実施した獣医療における調査で分離したMRSA(獣医師由来22株、動物看護師由来7株および犬由来3株)の遺伝子型を調べた。その結果、獣医療において分離されるMRSAは、日本の医療現場でよく検出される遺伝子型(spa t002-SCCmec II)が大半(20/32)を占めた。また、犬から分離されたMRSAの遺伝子型(ST5-spa t002-SCCmec II または ST30-spa t021-SCCmec IV)は、その犬が飼育または診療を受けた動物病院に勤務する獣医師らから分離されたMRSAの遺伝子型と一致し、動物病院内で獣医師から犬へMRSAが伝播したと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、獣医師らから分離材料と疫学情報を収集し、MRSAの分離を行った。また、これに加え、疫学情報と分離結果の単変量解析を終了した。さらに、先行して行った調査の中で分離していたMRSAの遺伝子型別から、動物病院内でのMRSA伝播を明らかにすることが出来た。 しかし、倫理審査により、当初計画していた調査対象の一部を除外したため、調査規模が縮小した。
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今後の研究の推進方策 |
新たな調査の中で分離されたMRSAについて遺伝子型別を進め、疫学情報の多変量解析等を行う。今回の調査では、先行した調査と比べ、MRSAの分離率が低下した一方で、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)の分離率が上昇した。MRCNSは、耐性遺伝子であるmecAの起源とも考えられているため、MRCNSの遺伝学的解析もあわせて行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初調査対象として計画していた獣医学生については、倫理審査の過程で調査対象から除外したため、予算の一部を次年度に繰り越した。しかしながら、上述した通りmecAの起源とも考えられているMRCNSの分離率が急増したため、次年度はこれらの遺伝子型別もあわせて行う予定である。
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