研究課題/領域番号 |
23790679
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
武井 直子 川崎医科大学, 医学部, 助教 (00509276)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 石綿 / CTL / CD8 / 中皮腫 |
研究概要 |
アスベスト(石綿)曝露は悪性中皮腫や肺癌を引き起こす。石綿の発癌作用はよく知られているが、一方で癌疾患の抑制に働く生体防御機能のひとつである抗腫瘍免疫機能への石綿曝露影響は不明な部分が多い。研究代表者はこれまでに、リンパ球混合培養時の石綿曝露によって、抗腫瘍免疫を担うヒトCD8陽性細胞傷害性T細胞(CTL)の分化が抑制されることを明らかにした。そこで、本研究課題では1.石綿曝露によるCTL分化抑制機構の解明、2.石綿曝露指標である胸膜プラーク陽性者と悪性中皮腫患者におけるCD8+T細胞機能の解析、および3.メモリーCTLへの石綿曝露影響を行い、石綿中皮腫関連分子指標の探索することを目的とする。平成23年度は実施計画にそって、1.石綿曝露によるCTL分化抑制機構の解明に取り組み、(1)CTL分化抑制時にCD8+T細胞の増殖抑制を伴うこと、及び(2)石綿曝露によって混合培養後のCD8+T細胞あたりの標的細胞に対する細胞傷害性の低下を明らかにした。また平成24年度の実施計画のうち、2.石綿曝露指標である胸膜プラーク陽性者と悪性中皮腫患者におけるCD8+T細胞機能の解析についても取組み始め、胸膜プラーク陽性者では健常人に比べて、刺激後のCD8+T細胞のgranzyme B+細胞比率及びperforin+細胞比率が高いことがわかった。平成23年度に得られた研究成果は、癌疾患の抑制に働くCTLの分化が石綿曝露によって抑制される機構の解明に貢献できる。また、刺激後の胸膜プラーク陽性者と健常人のCD8+T細胞機能の差異は、悪性中皮腫発症の早期予防につながる各種CTL機能検査法の確立にむけて、重要な知見となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は「1.石綿曝露によるCTL分化抑制機構の解明」に取り組み、得られた研究成果について、平成24年3月19日にメキシコのカンクンで開催された第30回 International Commission on Occupational Healthで、演題名「Effects of asbestos exposure on induction of cytotoxic T lymphocytes in mixed lymphocyte reactions and cytotoxic potential of CD8+ lymphocytes in asbestos-exposed people.」で、国際学会発表を行った。また、今年度は平成24年度に実施予定としていた「2.石綿曝露指標である胸膜プラーク陽性者と悪性中皮腫患者におけるCD8+T細胞機能の解析」についても取り組み始めたので、プラーク陽性者のCD8+T細胞機能の解析結果について、平成24年3月13日に米国のサンフランシスコで開催された第51回Annnul meeting of Society of Toxicologyで演題名「IFN-gamma, granzyme B and perforin-positive cells of CD8+ lymphocytes in asbestos-exposed people with pleural plaque.」で国際学会発表を行った。以上の理由から、本研究課題の研究目的はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成24年度の実施計画としている「2.石綿曝露指標である胸膜プラーク陽性者と悪性中皮腫患者におけるCD8+T細胞機能の解析」について、平成23年度に引き続いて胸膜プラーク陽性者のCD8+T細胞機能の解析数を増やすとともに、悪性中皮腫患者のCD8+T細胞機能解析についても行う。また、平成24年度の実施計画である「3.メモリーCTL機能への石綿曝露影響の解析」についても取り組む。平成24年度後半は、これらの研究から得られた成果と平成23年度の実施計画「1.石綿曝露によるCTL分化抑制機構の解明」から得られた研究成果を統括し、各種CTL機能における石綿中皮腫関連分子指標を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用予定の研究費については、平成24年3月開催の研究成果発表のための学会出張旅費として使用。平成24年度に請求する研究費については、細胞培養を中心に、その機能評価のために、細胞培養液, 牛胎仔血清, 培養プレート, 蛍光標識抗体, リコンビナント蛋白が不可欠であり、それらの消耗品を研究経費として使用する計画を立てている。また、研究成果は,国内・国際学会などでの報告に加えて、論文に纏めて海外雑誌に投稿・誌上発表するため、出張費、論文校閲費、論文印刷費が必要である。
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